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ゆらゆら

「……で?えっと」 この子はどうするのかな。 なんで黒猫からわざわざ 人間になったんだろ。 よく見ると俺のパーカー着てるし …下は履いてないとみた。 「俺ね名前ないの。だからご主人様の 君がつけてほしい!」 「あ、そうだ、名前決めようと思ってたんだった!」 って!!! で?って聞いたのは名前じゃなくてこれからどうするのかを聞いたつもりなんだけど! …とりあえず、な、名前ね。 俺は名前を考えながら彼をジッーと見てると 相変わらず目に入るしっぽが気になっていた。 だってずっとゆらゆら揺れてるから… ゆらゆら… 「ゆら」 「ん?ゆら??」 「名前、ゆらってどう???」 いやまて!!テキトーすぎだろ!俺! ただゆらゆら揺れてるしっぽで決めたなんて! 彼を見ると彼は俺を見て固まっていた。 そりゃ固まるわ、自分の名前そんなテキトーに 決められたかと思うと… 「ごめん、もっと真剣に考える…」 俺はもっかいウーンともうしっぽを見ないように考え込んでると 「…え。ゆらってすごくいい」 意外な言葉が聞こえてきて 思わず顔をあげて彼を見る。 「え??」 「ゆら!!!いいね!俺、ゆら!」 は???まってくれ。 この子、アホなのか?? 「ちょ、え、まっ」 「ゆら〜!俺は今日からここの家のゆらだ〜」 ン?ここの家の??? 俺んちの?? 「え!?どゆこと??おれんちに住むの!?」 「え??ちがうの???」 俺の言葉にわかりやすくしょぼんと 耳としっぽを伏せて伺ってくるゆら。 てゆか、ゆらでいいんかい。 「だって、だって俺、この姿になって どうすればいいのか分かんないし、 頼れるの君しかっ…うっ…うぅ」 身を丸めて青い瞳からこぼれる 大粒の涙を両手で受け止めるゆらに 俺はギョッとした。 「な、泣かないで!!!ね??」 「じゃあここに置いてくれる??」 えっと、それは… 猫だったらもちろん飼ってるけど この子は…猫??いや人間?? 姿は人間だけど細かいところは 猫だし… うーーーーーん。 あぁ!!!もうどっちかわかんないから もうどうにでもなれ!! えええい!!! 「今日からゆらは俺のペットだよ!!」 ↑もはや、やけくそ。 拾ってきたんだからちゃんと責任ある行動をしないと!! 「ほんとぉ???わーい!! だぁいすきーーぃ!!」 「うわぁっ」 嬉しいのか抱きついてくるゆらに 俺はびっくりしつつも抱き締め返した。 昨日の猫からは信じられないくらいの同級生くらいの男のカラダだけどこの子は猫だ。 猫なんだ。 俺が抱きしめてるのは猫。 何もおかしくない! 「そういえば君の名前は??」 俺の耳元で囁くようにゆらが聞いてきた。 「蓮、長瀬 蓮」 「蓮かぁ。蓮もいい名前だねー」 ゆらは俺を見つめて瞳を細めながら笑った。 凄く綺麗に笑うゆらについ うっとりしてしまう。 その背後に見える時計をちらっと見ると 「ぅおい!!!」 普段の家を出る時間からもう40分も 経っている。 「なぁに??どうしたの?」 「ゆら、ごめん!俺、学校行かなきゃだから 家でお留守番できる??」 「学校??」 そう言って小首を傾げるゆらは離れる俺を 寂しそうに見上げる。 「ぁぁあ〜その顔やべぇ。」 俺は時間がやばいのを一旦忘れて また、ゆらを抱きしめた。 男って分かってるのに可愛くて 離れたくない! いや男じゃなくこいつは猫なんだ!! そんな俺に追い打ちをかけるように ゆらは甘くつぶやく。 「お留守番やだ。 蓮といなきゃ俺、不安だよー…」 「ゆら…」 ノックアウト 俺はすぐに紗智に電話をかけて 「もしもし??蓮??」 「あ、ごめん紗智。今日休むって ノブちゃんに伝えといて!」 「え??珍しっ!風邪??サボり??」 「サボり!!じゃあな!」 学校生活で初のサボりをしでかした。

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