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ゆらの正体
「ゆら!!ゆら!!」
そのへんにいた友達にゆらを知らないか
聞くとみんな見てないの一点張り。
なんで…ゆらどこいったんだよ
走り回って疲れた時、顔を上げたら
目の前には神社があった。
まるでここに導かれたみたい…
てゆうかここ、さっきも来た神社??
さっき来たといっても ゆらが頑なに
入りたくないと言っていたから俺も
行かなかった神社だ…
ここにゆらがいるとは考え難いが
俺はゆらが見つかりますようにとお願いしに
行こうと思って足を踏み入れた。
結構 りっぱな神社…
そう心で呟いた直後に
『お前化け猫が憑いてる』
突然 誰かに声をかけられた。
「え…だれ…」
周囲を見渡しても誰も俺を見ていない。
なんだ、空耳か…
『あの化け猫なら拝殿の裏にいるぜ』
「え…っ」
今度はしっかりと耳に声が届いた。
やっぱり周囲を見渡しても誰もいない。
最近考え事をしてたからついに幻聴も
聞こえてきたのかな…
『あの化け猫が決めたことだから俺は何も言わないけど。まぁこの神社に入ったからには祓わなきゃいけないがどのみちあの化け猫は消えちまう。時間的にな。』
……幻聴なはずがない、こんな話。
この声の主が言う化け猫とは恐らくゆらの
事なんだろう。
でも
消えるって何。時間的にって何。
ゆらが消えるわけない。
でも俺が抱いていた疑惑を明かそうとする
この声に俺は耳を塞ぐことはできなかった。
もう目を瞑ることは出来ない。
『お前が見てきた猫は全て偽物だよ。
ホンモノがあった所でそれも偽物にすぎない』
偽物??どういうこと…
だって俺も周りのみんなも
ゆらがちゃんと見えてるじゃん。
偽物なのはこの目に見えないお前じゃないの?
『まず初めから間違えてるんだ。
あの猫が死んだ理由はあの川で溺れた訳じゃない。あの川にいたのは死んだからなんだ。
あの川は動物の三途の川』
三途の川??
何言ってんの?ゆらはまず死んでない。
ちゃんと生きている。
……いや待って
ゆらは上手く三途の川を渡ることができなかったから化け猫になってしまったってこと??
よく分からないけどそれなら猫人間になってしまったのもまだ納得がいく…
『もうあの猫が川を渡らなければならない締切の時間もすぎてしまったようだな。
自分からそれを逃げて馬鹿な魂だ。
まぁ、
俺から言えることはここまでだ。
あまり人間に話すと罰せられるからね。
さっきも言った通り、化け猫は拝殿の裏だ』
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