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周りを生け垣で囲ってある典型的な日本家屋。そこが祖母と二人で暮らしている美弦の自宅だ。 黒い瓦が乗っている門扉の引き戸を開けて、敷地に入る。 日本庭園の中の石畳を歩き、『生田流国操会家元』の看板が掲げてある玄関から家に入る。 「おばあさま、ただいま戻りました」 祖母の自室の襖の前で、声をかける。 「美弦さんおかえりなさい。学校は、どうでしたか?」 「特に、変わり映えは……。ぁ…、桔梗屋さんの息子さんと同じクラスになりました」 「……そう。 仲良くさせていただきなさい。良い刺激になると思いますよ」  「はい。おばあさま。 失礼します」 挨拶を済ませ、自室に戻りベッドに身を投げ出した。 今でも信じられない。彼が入学して来て、同じクラスで、しかも隣の席で、 声をかけてくれた……。 イイ声してたな。 美弦と涼雅が出会ったのは、中学の時、涼雅が彼の父親である桔梗屋さんに連れられて、この家を訪れた時だった。 その日は、国操会の定期演奏会があった。 いつものように演奏会で使用した箏を桔梗屋が届けに来ていて、祖母が対応していた。 「桔梗屋さん、ご苦労さまです。いつもの部屋までお願いしますね。 あら?涼雅くん? 大きくなったのね?」 「はい。コイツも中学に上がったので、これからは、手伝わせようと思いまして」 「おねがいします!」 「はい。よろしくおねがいしますね」 美弦自身、ゲイなのかどうかは、自分でも解らない。 祖母は、家元。亡くなった母も、箏曲家。当然、多くの弟子が出入りしているが、全員が女性。 そんな特殊な環境のせいなのかもしれない。 涼雅が、箏を左右の肩に2台ずつ乗せて運び入れるその姿、逞しさに、気づけば心を奪われていた。

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