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 家に入る前は、玄関前でバサバサとコートをはたく。  そして、部屋に入ったら、まずは風呂。  花粉の季節になってからのルーティーンだが、これが結構幸せだったりする。 「お前、あと1ヶ月ちょいで、新卒じゃなくなるんだな」 「はい。……後輩ができるなんて、ちょっと、不安ですね」 「まあ、なんか教えるみたいな役は振らないようにするからさ」  赤くなった鼻をちょんちょんと触ると、篠山は顎を引いて避けた。  その仕草が子犬のようで、ついついかまいたくなってしまう。 「あはは。かーわい」 「ん……そもそろ薬切れる時間なので、……っくし」  控えめなくしゃみ。可愛い。  そして、それを見たオレの頭には、ちょっとばかし悪い考えが浮かんでしまった。  薬を飲んだあと、ぽわぽわ状態でセックスしたらどうなるんだろ……? 「きょうは早めに飯食ってさっさと寝ような」 「はい。あしたはご迷惑おかけしたくないので、ちゃんと睡眠とります」  22:00。早めの寝支度を済ませ、布団にもぐる。  薬は20分くらいで効いてくるようなので、そこまでに寝落ちてしまわないよう、やたらに話を振った。  4月からの新体制についてという、小難しい内容で。 「…………なるほど」 「ほんとに分かったのかぁ?」 「はい……たぶん」  目がとろんとしている。  脇腹をつついてみても、「うぅん」と小声でこぼすだけで、めちゃくちゃ眠そうだ。  オレはイタズラ心満載で、篠山に甘えてすり寄る。 「しのやまぁ。エッチしたいー」 「ん……はぃ」  緩慢な動きで服を脱ごうとしているが、うまくいかないらしい。  もたもたするのを手伝って、そのままキスをする。 「安西さん、なんかきょうは、すごい……積極的ですね」 「うん。会社で寝てるの見てたら可愛くて、ムラムラしてた」 「言ってくれれば、薬飲む前にちゃんとしたのに……」  むくりと起き上がり、寝ぼけた顔で引き出しを開けている。  オレはローションのボトルを手に取りながら言った。 「自分でほぐすから、ちょっと待ってて。寝るなよ」 「寝ないですよ……」  四つん這いになり、あえてよく見えるような角度で、うしろをほぐす。 「ん……、ん」 「すご……安西さん、お尻でオナニーしてる」  眠たそうな声なのに、視線はオレの全身を舐め回すように見ている。 「きもちいい?」 「……、自分じゃ分かんな……」 「そこ、くいって指曲げてみて?」 「ふぁ……、ぁ」 「うん、じょうず。でも、俺ならもっと気持ちよくしてあげられるよ」  敬語が……とれている?  これはレア体験かも、なんてことを考える余裕があったのは、そこまでだった。 「ねえ……会社で俺がねてるとき、えっちな想像した?」  舌足らずな言葉責め。  妖しい手つきで撫で回されて、力が抜ける。  ごろりと仰向けになると、篠山はオレの体をまたいで膝立ちになった。 「たとえばこんなふうに……、俺のちんこ、口につっこまれちゃうとか」 「ん……!? んぅ、」 「なめて」  オレがペニスを咥えこむと、篠山はゆるゆると腰を前後に振り始めた。  髪を掴まれているので、逃げられない。 「んぐ、……っん、はぁっ、んむ」 「涙目の安西さん、かわいー……」 「はぁっ、んぅ……っ、ん」 「もっと口すぼめて」  苦しい。のに、口の中を征服されて、なんとも言えない快感が押し寄せる。  篠山は眠たそうに目をこすりながら、首だけで振り返って言った。 「すごいね、ちんこ勃ってる。まだなんにもさわってないのに」 「ん、んぅっ」 「これ、いま口につっこんでるの、あとでお尻に挿れるんだよ。……わかる?」  いつも違う口調で、やたらに興奮してしまう。   「んぐっ、……んぅ、ふ、ぁ」 「じゃー……ほんとのエッチしよっか」  口が開放される。  ……と、篠山はつつっと舌を這わせながら、徐々に下に降りていった。  首筋、胸、脇腹、へそ……徐々に期待する場所に近づいてきて、思わず身悶えてしまう。 「腰、ゆれてる」 「んっ、……早く、欲し、」 「まーだ。おりこうにしてないと、あげない」 「お利口ってなに」 「勝手にきもちよくなっちゃだめ。俺がいいよっていうまで、動かないで、がまんして」  太ももの内側や、脚の付け根など、きわどいところをしつこく舐める。 「ふ……ぁ、も、ぅ、お願い」 「お尻ひくひくしてる。どうしてそんな、淫乱になっちゃったの?」 「篠山が、いっぱいしてくれるから」 「そっかー……。毎日ハメられて、えっち大好きになっちゃったんだね。はずかしい格好いっぱいさせられて、イッてるところも見せちゃって」  呂律が回っておらず、ぽわぽわ。  なのに、言っていることは言葉責めだから、感覚がおかしくなってくる。 「想像だけでイける?」 「む、むり……っ」 「できるよ。ちょっとまってて」  篠山は起き上がり、ふらふらと危ない足取りでネクタイを2本持ってきた。  そして、手足を縛られる。 「やだ、取れってぇ、」 「俺に見られてるの、意識して。まだ触られてもないのに、ちんこ固くしちゃってるの、見てるから」 「ひぅ、……っ」 「想像してね。俺に視姦されて、イッちゃうところ。なにもしてないのに、ガクガクガクッてふるえて、がまんできなくて……」 「はぁっ、……は」 「ほら、ちんこピクピクしてきた」 「やだ、見るな、……ぁあ」  触って欲しすぎて、頭がおかしくなりそう。  なんでもいいから刺激が欲しい。 「うつぶせになって、ちんこシーツで擦ったらきもちいいかもよ? できる?」 「……したら、あとで挿れてくれる?」 「うん」  オレは手足を縛られたままうつ伏せになり、ベッドに擦りつけるように、ズリズリとオナニーを始めた。 「あんっ、ア、ぁんっ」 「ん、かわいい。おねだりしてみて?」 「したぃ、エッチしたい、」 「声裏返ってる」 「はぁっ、はぁっ……、ねえ、篠山ぁ……」  シーツにペニスを擦り付けながら、情けない声が漏れる。 「恥ずかし、やだ、」 「でも腰全然とまんないね」 「あぁ、ンッ、」 「いいよ、シーツのうえ、出して」  見られていると思うと、余計に興奮してしまう。 「ひ……っ、ン、イク、イクッ、イきたぃ」  泣きながら、みっともなくシーツに擦り付ける。  まだイけない。 「お尻もしちゃおっか。ひとりで気持ちよくなっちゃうとこ、見ててあげる」  戸棚を漁った篠山は、小型のローターを腹の中に埋め込んだ。  ゆるい振動で前立腺を刺激されながら腰を振り、痴態を晒す。 「あっ、も、無理ッ……、イク、イクイクイクッ……! …………っああ!!」  シーツがじんわり湿っていくのを感じながら、ヒクヒクと痙攣する。  篠山はふわっとあくびしながら、手足を解放した。 「お尻、まだたりないでしょ。おもちゃでいじめてあげる」 「ひぅっ、やら、……篠山のがいい」 「んー? おもちゃもきもちいいよ、ほら」  四つん這いにさせられ、ローターを入れたままのところに、篠山の細長い指が入ってきた。  やわやわと腸壁を探られて、あられもない声が出る。  篠山は小声で「そろそろかな」と言いながら、ローターを一点に固定した。 「あああぁぁああ……ッ」 「ふふ、きもちいい?」 「やめ、やっ、ぁあああッ!!」 「すごい、ビクビクしてて、かわいい。じゃあ……とびっきり気持ちいいの。はい」 「……――――――ッ!!」  精液ではないものが勢いよく出る。  潮を噴いたのだと気づいたのは、たっぷりいじめられ、ローターを引き抜かれたあとだった。 「……ぁ、あ……」 「あれ。飛んじゃったかな。……ん、俺もねむいや」  満足そうに微笑む篠山に、優しく頭を撫でられる。  そこでオレは、意識を手放した。

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