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7-3
家に入る前は、玄関前でバサバサとコートをはたく。
そして、部屋に入ったら、まずは風呂。
花粉の季節になってからのルーティーンだが、これが結構幸せだったりする。
「お前、あと1ヶ月ちょいで、新卒じゃなくなるんだな」
「はい。……後輩ができるなんて、ちょっと、不安ですね」
「まあ、なんか教えるみたいな役は振らないようにするからさ」
赤くなった鼻をちょんちょんと触ると、篠山は顎を引いて避けた。
その仕草が子犬のようで、ついついかまいたくなってしまう。
「あはは。かーわい」
「ん……そもそろ薬切れる時間なので、……っくし」
控えめなくしゃみ。可愛い。
そして、それを見たオレの頭には、ちょっとばかし悪い考えが浮かんでしまった。
薬を飲んだあと、ぽわぽわ状態でセックスしたらどうなるんだろ……?
「きょうは早めに飯食ってさっさと寝ような」
「はい。あしたはご迷惑おかけしたくないので、ちゃんと睡眠とります」
22:00。早めの寝支度を済ませ、布団にもぐる。
薬は20分くらいで効いてくるようなので、そこまでに寝落ちてしまわないよう、やたらに話を振った。
4月からの新体制についてという、小難しい内容で。
「…………なるほど」
「ほんとに分かったのかぁ?」
「はい……たぶん」
目がとろんとしている。
脇腹をつついてみても、「うぅん」と小声でこぼすだけで、めちゃくちゃ眠そうだ。
オレはイタズラ心満載で、篠山に甘えてすり寄る。
「しのやまぁ。エッチしたいー」
「ん……はぃ」
緩慢な動きで服を脱ごうとしているが、うまくいかないらしい。
もたもたするのを手伝って、そのままキスをする。
「安西さん、なんかきょうは、すごい……積極的ですね」
「うん。会社で寝てるの見てたら可愛くて、ムラムラしてた」
「言ってくれれば、薬飲む前にちゃんとしたのに……」
むくりと起き上がり、寝ぼけた顔で引き出しを開けている。
オレはローションのボトルを手に取りながら言った。
「自分でほぐすから、ちょっと待ってて。寝るなよ」
「寝ないですよ……」
四つん這いになり、あえてよく見えるような角度で、うしろをほぐす。
「ん……、ん」
「すご……安西さん、お尻でオナニーしてる」
眠たそうな声なのに、視線はオレの全身を舐め回すように見ている。
「きもちいい?」
「……、自分じゃ分かんな……」
「そこ、くいって指曲げてみて?」
「ふぁ……、ぁ」
「うん、じょうず。でも、俺ならもっと気持ちよくしてあげられるよ」
敬語が……とれている?
これはレア体験かも、なんてことを考える余裕があったのは、そこまでだった。
「ねえ……会社で俺がねてるとき、えっちな想像した?」
舌足らずな言葉責め。
妖しい手つきで撫で回されて、力が抜ける。
ごろりと仰向けになると、篠山はオレの体をまたいで膝立ちになった。
「たとえばこんなふうに……、俺のちんこ、口につっこまれちゃうとか」
「ん……!? んぅ、」
「なめて」
オレがペニスを咥えこむと、篠山はゆるゆると腰を前後に振り始めた。
髪を掴まれているので、逃げられない。
「んぐ、……っん、はぁっ、んむ」
「涙目の安西さん、かわいー……」
「はぁっ、んぅ……っ、ん」
「もっと口すぼめて」
苦しい。のに、口の中を征服されて、なんとも言えない快感が押し寄せる。
篠山は眠たそうに目をこすりながら、首だけで振り返って言った。
「すごいね、ちんこ勃ってる。まだなんにもさわってないのに」
「ん、んぅっ」
「これ、いま口につっこんでるの、あとでお尻に挿れるんだよ。……わかる?」
いつも違う口調で、やたらに興奮してしまう。
「んぐっ、……んぅ、ふ、ぁ」
「じゃー……ほんとのエッチしよっか」
口が開放される。
……と、篠山はつつっと舌を這わせながら、徐々に下に降りていった。
首筋、胸、脇腹、へそ……徐々に期待する場所に近づいてきて、思わず身悶えてしまう。
「腰、ゆれてる」
「んっ、……早く、欲し、」
「まーだ。おりこうにしてないと、あげない」
「お利口ってなに」
「勝手にきもちよくなっちゃだめ。俺がいいよっていうまで、動かないで、がまんして」
太ももの内側や、脚の付け根など、きわどいところをしつこく舐める。
「ふ……ぁ、も、ぅ、お願い」
「お尻ひくひくしてる。どうしてそんな、淫乱になっちゃったの?」
「篠山が、いっぱいしてくれるから」
「そっかー……。毎日ハメられて、えっち大好きになっちゃったんだね。はずかしい格好いっぱいさせられて、イッてるところも見せちゃって」
呂律が回っておらず、ぽわぽわ。
なのに、言っていることは言葉責めだから、感覚がおかしくなってくる。
「想像だけでイける?」
「む、むり……っ」
「できるよ。ちょっとまってて」
篠山は起き上がり、ふらふらと危ない足取りでネクタイを2本持ってきた。
そして、手足を縛られる。
「やだ、取れってぇ、」
「俺に見られてるの、意識して。まだ触られてもないのに、ちんこ固くしちゃってるの、見てるから」
「ひぅ、……っ」
「想像してね。俺に視姦されて、イッちゃうところ。なにもしてないのに、ガクガクガクッてふるえて、がまんできなくて……」
「はぁっ、……は」
「ほら、ちんこピクピクしてきた」
「やだ、見るな、……ぁあ」
触って欲しすぎて、頭がおかしくなりそう。
なんでもいいから刺激が欲しい。
「うつぶせになって、ちんこシーツで擦ったらきもちいいかもよ? できる?」
「……したら、あとで挿れてくれる?」
「うん」
オレは手足を縛られたままうつ伏せになり、ベッドに擦りつけるように、ズリズリとオナニーを始めた。
「あんっ、ア、ぁんっ」
「ん、かわいい。おねだりしてみて?」
「したぃ、エッチしたい、」
「声裏返ってる」
「はぁっ、はぁっ……、ねえ、篠山ぁ……」
シーツにペニスを擦り付けながら、情けない声が漏れる。
「恥ずかし、やだ、」
「でも腰全然とまんないね」
「あぁ、ンッ、」
「いいよ、シーツのうえ、出して」
見られていると思うと、余計に興奮してしまう。
「ひ……っ、ン、イク、イクッ、イきたぃ」
泣きながら、みっともなくシーツに擦り付ける。
まだイけない。
「お尻もしちゃおっか。ひとりで気持ちよくなっちゃうとこ、見ててあげる」
戸棚を漁った篠山は、小型のローターを腹の中に埋め込んだ。
ゆるい振動で前立腺を刺激されながら腰を振り、痴態を晒す。
「あっ、も、無理ッ……、イク、イクイクイクッ……! …………っああ!!」
シーツがじんわり湿っていくのを感じながら、ヒクヒクと痙攣する。
篠山はふわっとあくびしながら、手足を解放した。
「お尻、まだたりないでしょ。おもちゃでいじめてあげる」
「ひぅっ、やら、……篠山のがいい」
「んー? おもちゃもきもちいいよ、ほら」
四つん這いにさせられ、ローターを入れたままのところに、篠山の細長い指が入ってきた。
やわやわと腸壁を探られて、あられもない声が出る。
篠山は小声で「そろそろかな」と言いながら、ローターを一点に固定した。
「あああぁぁああ……ッ」
「ふふ、きもちいい?」
「やめ、やっ、ぁあああッ!!」
「すごい、ビクビクしてて、かわいい。じゃあ……とびっきり気持ちいいの。はい」
「……――――――ッ!!」
精液ではないものが勢いよく出る。
潮を噴いたのだと気づいたのは、たっぷりいじめられ、ローターを引き抜かれたあとだった。
「……ぁ、あ……」
「あれ。飛んじゃったかな。……ん、俺もねむいや」
満足そうに微笑む篠山に、優しく頭を撫でられる。
そこでオレは、意識を手放した。
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