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 夜、帰宅するなりソファに倒れ込んだ篠山を見て、思わず笑ってしまった。 「疲れてんなあ」 「人の出入りが激しいと集中できないんです……」  いつもならジャケットを丁寧にハンガーに掛けるのに、きょうの篠山にはその体力すら残っていないらしく、適当に畳んでソファの背に掛けた。 「マッサージしてあげよっか。うまくできるか分かんないけど」 「えっ? いえ、そんなことさせるには」 「なんだよ水くさいなー。この間買ったオイルちょっと試したいし。脱げ脱げ」  無理やり転がして仰向けにし、ネクタイをしゅるりと抜き取る。  ひとつずつボタンを外していくと、篠山は恥ずかしそうに目をそらした。 「なに、その生娘みたいな反応」 「すみません。その……いやらしい想像をしてしまいまして」  正直な奴め。  膨らんだ股間にそっと手を這わせると、篠山は顔を真っ赤にした。 「すみません、せっかくご厚意で申し出ていただいたのに……」 「はあ? ご厚意なわけないだろ。下心満載だわ」  オレの、十分に固くなったそれを、太ももに押し付ける。  篠山は目を見開いて驚いたあと、じとっとした目でオレを見上げた。 「誘われた……と解釈していいですか?」 「もの分かりが良くて優秀だね、篠山は」  ニヤリと笑い、ボタンを外す作業を再開する。  割れた腹筋に舌を這わせると、篠山はすぅっと小さく息を吸った。  半同棲を始めて驚いたことのひとつに、こいつが毎晩自重トレーニングを欠かさないこと……というのがある。  超ガリ勉みたいなタイプかと思いきや、中高時代は陸上部で、ハードル走をやっていたらしい――曰く、個人競技で気が楽だったから、とのこと。  かつての副業で体力が無尽蔵だったのは、このような背景があった。 「ベッド行こ?」 「……だっこしていいですか」  先ほどまでの、疲労限界みたいな倒れ方をしていたのはなんだったのか。  ひょいと立ち上がり、軽々とオレを横抱きにして、ベッドに運ぶ。  壊れものを扱うみたいにそっと置かれて、キュンとしてしまった。 「新しいオイル、試したいですね。ちょっともったいない使い方してもいいですか?」 「……? 別にいいけど。結局オレがされんの?」  なんだ? と思っていたら、篠山は豪快にボトルを逆さにし、直接太ももの上に垂らしてきた。  ほのかなオレンジの香りに包まれ、リラックス……する暇もなく、足から下腹部を撫で回される。 「ん、んっ」 「こうすると、むくみも取れるし老廃物も流れるんですよ。気持ちよくないですか?」 「……っ、きもちぃけどぉ、」 「けど、なんですか?」 「ん……物足んない……。分かれよ」 「ふふ。いじわるしてごめんなさい」    勃ち上がったものに、触れられる。  ぬるぬると上下にしごかれて、思わず腰が浮いた。 「……ぁ、あ」 「すごい。エッチですね、安西さん。会社の人が知ったらびっくりしちゃいますね?」 「なんか篠山、きょう、いじわる……っ」 「猛烈な嫉妬と戦いながら仕事してるんで、疲れるんですよ」 「ん、なに……、がぁ」 「万人に平等な安西さんを見てると、正体不明のもやもやが」  中にぬるりと指が入ってきて、遠慮なしに前立腺を押された。 「ひぅ……ッ、ゃ、あ……っ、ンッ」 「このオイル、優秀かもですね。滑らかなので、ほら、こんな風にスルッと」 「ああっ、……だ、ぁあン」  上擦った声が漏れる。  シーツを掴むと、その手にキスされた。 「安西さんに、魔法をかけます」 「ふぇ……?」 「挿れた瞬間にイッちゃう魔法。泣きながらビクビクしちゃうかも」  背中がゾクゾクする。もう分かっている。  この『魔法の予告』で、既に魔法にかけられてしまっていることは。  前も後ろも、手技でぐずぐずにほぐされる。  絶妙にイキそうでイかないところばかり触ってくるから、頭がおかしくなりそう。  泣いて懇願しそうになるのを、寸でのところで踏みとどまっている感じ。 「限界ですよね。挿れていいですか?」 「ん、んぅ……、して、早く」 「その前にキス」  激しく口づけながら、ペニスを後孔の周りにおしつけてくる。  わざと何度も滑らせて、ギリギリ挿れない。  そんなことを繰り返されるうち、理性が保てなくなってきた。 「もぉ、篠山、挿れて……っ、ちんこ、奥欲し……っ」 「中に出していいですか?」  こくりとうなずくと同時に、心臓が痛いくらいドクドクと鳴る。  篠山はオレの脚を高く上げ、肩に乗せた。 「泣いて悦ぶ安西さんが見たいなー……」  と言った瞬間、ドンッと一発、奥を突かれた。 「ああぁああああ…………ッ!!」  絶頂とともに、大量の精液を派手に撒き散らした。  魔法成功。長く長く快感が続く。  体がビクビクと跳ね、ぎゅうっと瞑った目から、ボロボロと涙がこぼれる。 「締め付けやば……気持ちいいの、止まらないですよね」 「ふぁ、……ぁ、あ、止まんない、しのやま、こわぃ」 「怖くないですよ。気持ち良すぎちゃってるだけです」  たった一発で何十秒もイキっぱなしで、ビクつく体を自分で制御できない。  徐々に快感の波が去り、呼吸を取り戻すと、篠山はオレが息を整えるのを見届けてから、目を細めて笑った。 「俺も気持ちよくなっていいですか? 安西さんのお尻使って」 「ん、して、オレのお尻で気持ちよくなって……」  篠山がゆるゆると動き出すと同時に、オレは再び嬌声を上げた。  激しい動きではないのに、全身が快楽に侵される。 「あーっ、あッ、ああー! ぁっ、……あッ!」 「安西さん、ぐちゃぐちゃ」 「はっ、はぁっ、きもちぃ、しのやまぁ」  篠山は緩急をつけて巧みに中を突き、ときたま小さくうめいている。  オレは首の後ろに手を回し、しがみつきながら、何度も上り詰めた。 「…………っ、イキそ」  ボソッとつぶやいた篠山は、眉間にしわを寄せ、激しく腰を振る。 「中、出しますねっ」 「はぁっ、だして、いっぱい……っ、篠山のせーし欲しぃ」 「…………、イク……」  腹の中で、ドクドクと脈打つのを感じる。  オレは息を詰めて、その感触を味わった。

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