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何口かゼリーを摂取して落ち着いた葵を寝かしつけた彰吾は、きっちりと上まで留められた詰襟のボタンに手を掛けた。葵は何か言いたげな目を向けてはくるが、やはり抵抗は見せない。
このままいつものように裸に剥いて抱くことが現実的でないことぐらいは分かっている。眠るのに苦しそうだから外してやっているだけ。そう理由付けて、詰襟だけでなく真白いシャツのボタンも三つ分、開いていく。
「勉強、ついていけてない?」
覗いた鎖骨に指を這わせながら、彰吾は葵に問い掛ける。
葵がこの学校に現れたのは二週間前。だから、それ以前に授業でやった内容を把握出来ていないはず。徹夜して試験勉強をするような生徒は馬鹿だとは思うが、今回の葵に限っては同情できる部分がある。
だが葵は首を横に振った。強がりではなさそうだ。
「じゃあなんで?朝まで親父とヤッてた?」
冗談のつもりで投げかけた質問には、葵は何の反応も示さなかった。ただ気まずそうに彰吾から視線を外すだけ。つまりは図星のようだ。
「マジで?」
「んっ……んん」
「ホントだ、腫れてんな」
シャツの中に手を入れ胸元をまさぐると、すぐにぷつんと腫れ上がった突起が指に触れた。どこか熱を持っているような気さえする。相当弄られたのだろう。
彰吾は腰掛けたパイプ椅子をさらにベッドへと引き寄せ、もう少しだけ、彼への追及を続けることにした。
「つーか、一緒に暮らしてんだもんな。いくらでも抱けんのか」
彰吾たちとは違い、平日の朝も夜も、そして週末はそれこそ一日中制限なく葵を好きにできる。この体を作り上げた存在とはいえ、葵を自由に貪れる男が正直羨ましくて仕方ない。
もしも自分が葵を一晩自由に出来るとしたらどうするだろうか。思わずそんな虚しい空想すらしてしまう。
「ンッ、や……あぁっ」
シャツの中ではそれほど派手な動きは出来ないものの、人差し指と親指を擦り合わせて摘んでやれば、葵はぴくんと背を反らせて愛らしく喘いでみせる。そして彰吾の指の中でそこはさらに硬く尖っていった。
衣服を纏わせたまま、シャツに突っ込んだ手で左胸だけを弄んでいる。いつもの遊びに比べたらほんの些細なものだ。それでも数日ぶりに触れた肌の柔らかさや、耳触りのいい甘い嬌声は彰吾に不思議な満足感を与えてくる。
今葵を鳴かせているのは自分。涙を溜めた蜂蜜色の瞳が映すのは彰吾だけ。
うっすら開いた唇に誘われるがまま、己の唇をそこに重ねる。小さな唇に舌を滑り込ませれば、逃げるどころか求めるように絡んできた。これも父親に仕込まれたことなのだろう。
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