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第4話-①

 慌ただしく駆けていく足音。その廊下に、勢いよく回転するキャスターの音が混ざって響く。痛いと喚く子供の声。必死に名前を呼びかける女性の声。苦しそうな男性の呻き声。到着する何台もの救急車。その度に、血まみれの急患がストレッチャーに乗せられ運ばれていく。 「60代男性一名、女児一名、40代女性一名、20代男性一名です!」 「出血が酷いな。すぐに輸血の準備を!」 「先生!O型の血液が足りません!他院から要請するしか……!」 「すぐ手配してくれ!」 「あの、僕O型なんです!僕の血を使って下さい!」  そう言って、すがるように看護師の腕を掴んだのは一人の青年だった。ボロボロと涙を流し、懇願するように首を垂れて青年は必死に言葉を口にした。 「とても大切な人なんです!お願いします、僕の血を使って下さい……!」  青年の震える声。震える手。「お願いします」と掠れながら何度も繰り返すその言葉に、看護師は足の向きを変え青年を誘導して言った。 「……分かりました。すぐに検査と準備をするので、こちらに来てください!」  スタンドに輸血パックが掛けられると、濃く染まった赤血は管を伝って徐々に流れていった。願い続ける青年の祈りと共に。  どうか、命を繋ぐ希望になりますように。  どうか、大切な人を救えますように。  どうか、生きてまた会えますように。  どうか、お願いします神様――。

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