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第6話

「勇者たちよ、よくぞ参られた。この時をどれ程待ち望んだ事か……」 そう言うのは王様の横にいる宰相っぽい人。 王様は最初に言葉を放ったきり何も喋らない。 それどころか、肘置きに肘をついて頬杖をついている。完全に傍観体勢だ。 自分が喚んでおいてあの態度。 ………あの王様、何か嫌な感じだな。 「まずはお名前を教えてはくれないだろうか?」 宰相っぽい人にそう言われて、俺たちは顔を見合わせた。 「俺は水上 廉です」 しばらく沈黙した後、芸能人っぽい人が一番最初に名乗った。 「………高峰 蒼太」 次にやんちゃっぽい人がぶっきらぼうに名乗る。その後、皆の視線が俺に集まった。 うわ、あまり名乗りたくないな。 でもこんな状況で名乗らない訳にもいかないし……… 「………風城 双葉」 結局名乗らなくて済む方法が思い付かなくて、俺は名乗ってしまった。 ………名前を使って縛られなければ良いんだけど。 俺の知ってる話の中で、『隷属スキル』っていうのが出てくる話がある。 隷属スキルは名前とかを使って対象の人物の動きを制限するスキルだ。 この世界にそのスキルが有るかは分からないけど、そんなので制限されるのは勘弁してほしい。 「次にステータスを確認して貰いたい」 そう言う宰相に、俺の体がピクンと反応した。 来た!!ステータス!! さっきまで隷属スキルがどうのと考えてた俺の頭は、ステータスと聞いて完全に切り替わっていた。 「ス、ステータスって?」 と水上が戸惑う。 高峰も訳が分からず、戸惑ってるみたいだった。 まぁ知らない人が聞いたら戸惑うよな。 「【ステータスオープン】と唱えてください。そうすればあなた方の前にステータスが開きます」 宰相がステータスの開き方を二人に教える。多分俺にも言ってるんだろうけど、俺には説明なんて不要だ。 「ス、ステータスオープン?」 開き方を教えてもらった水上が言われるまま呪文を唱える。 その瞬間、水上の顔が驚いた表情に変わった。 多分目の前にステータスが現れたんだろう。 高峰もステータスを開いたのか、驚いた顔をしている。 俺からは二人のステータスが見えないってことは、この世界のステータスは自分にしか見えないのか。

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