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第8話
「これで我らは救われる」
そう言って宰相は涙を流す素振りをする。
「今、このアルザイル王国は存亡の危機に陥っています。魔族によって流通が滞り、王国は貧困になり民も苦しんでいます。勇者様方、どうか魔族を倒し我らをお救いください」
そう言って宰相は俺たちに頭を下げた。
俺はもう一度王様を見ると、王様の態度は相変わらずだ。
こういう展開は予測出来てた。て言うか、想像通り過ぎてちょっと拍子抜けでもある。
宰相の話もそうだし、王様の態度もそうだ。民が貧困で苦しんでる?胡散臭すぎだろ。
民が貧困に陥ってるってことは、自動的に王族も貧困に陥るはずだ。でも見てるとそれを感じない。高そうな服に豪華な装飾品。部屋の内装も豪華な物で埋め尽くされてる。宰相が言った事にも信憑性が全く無い。
ここは後者だったか。……最悪だな。
そう思って、俺は思わず舌打ちをしてしまう。
「分かりました。俺に出来ることなら」
そう答えたのは水上だった。
その言葉に周りが歓喜に沸く。
はぁ!?馬鹿じゃないのか!?何簡単に引き受けてんだよ。
俺は驚いて思わず水上を見る。
「面白そうだし、俺も勇者ってのやってやるよ」
高峰もそう答える。
こっちは理由が論外だし!?何だよ面白そうって!?
そう思って俺は顔を押さえた。
どうする?勇者を引き受けて捨て駒にされるのはごめんだ。………だったら仕方ないよな。
そう思って、俺はため息をついた
ふと見ると、皆の視線が俺に集まってる。
期待と言うよりは『当然引き受けるだろ』とでもいうような視線を向けてくる。
思い通りになってたまるか!!
「俺は、勇者になんてならない」
そう言うとどよめきが起きる。
「な、なにを……」
宰相も動揺が隠せないみたいだ。
「俺はこの世界の人間じゃないからな。俺があんたたちに力を貸す理由はない」
そう言うと上座に座ってた王様がガタンと立ち上がった。
王様は冷たく鋭い視線を向けてくる。
その視線に冷や汗がでてくる。でもここで引くわけにはいかない。
「勇者にはなりたくないと?」
恐ろしく冷たい声。
「別になりたくない訳じゃない」
そう、なりたくない訳じゃない。むしろ願ってもないことだ。ましてや賢者だから嬉しくて仕方ない。
「ならこの国の勇者として仕えてはくれぬか?」
「それは断ると言ってるんです」
そう言うと、王様の顔が険しくなる。
「この私の言葉が聞けぬか。」
「俺はこの国の人間じゃない。あんたの命令を聞く道理はない」
「陛下に対して無礼な!!」
そう言った瞬間、宰相がそう叫ぶ。
「この無礼者を捕らえよ!!」
宰相がそう言うと、後ろの扉が勢いよく開いて兵士たちが飛び込んできた。
俺はあっという間に兵士たちに囲まれた。
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