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第11話

問題はここからどうやって出るかだけど…… 俺は鉄格子に触れて少し揺すってみるけどびくともしない。 まぁ、素手で壊れるわけないか。 そう思って俺はため息をつく。 ……これは、仕方ないよな。 俺は手のひらに魔力を溜める。 光魔法 【光線】 頭の中でイメージを固めると、指先から一筋の光が現れる。俺はその光で鉄格子を切った。鉄格子が切れて開いた場所から外に出る。 本当は壁とか壊して脱出ってやりたいところだけど、あまり騒ぎになると面倒だし、それにここ地下だから壁壊したら俺が埋まる。 まずは現状把握だな。 この地下牢の入り口に兵士が二人いるのは知ってるけど、他はどうなってるのか分からない。それどころかこの城内だってどうなってるのか。……とりあえず、ここから出るか。 そう思って俺は外に通じる階段を登った。 扉の前まで来ると手に魔力を籠める。 雷魔法 【点雷】 魔法を放つと外で二人分の呻き声が聞こえてきた。そっと扉を開けて外の様子を伺うと兵士が二人倒れていた。 よしっ!上手くいったみたいだな。 『点雷』は雷魔法で作った小さな玉を相手に打ち込む魔法だ。俺がスタンガンをイメージして考えた魔法。殺傷力はないけど、気絶するくらいには衝撃がある。俺は謝る意味で倒れてる二人に手を合わせた。 外に出ると周りは明かり一つない。どこまでも暗闇が続く。 暗いのは隠れるのに好都合だけど、こうも何も見えないと本当どこがどうなってるのか分からないな。とりあえず魔法で現状把握だな。 風魔法 【風読】 これは策敵魔法的なものが出来ないかと思って考えた魔法。風を周囲に広げて風がすり抜ける感覚で、人の位置や建物の形を把握する。でもこれはまだ試験段階で、人の位置とかもまだ曖昧にしかわからない。要改良だ。 俺は風魔法で何とか警備兵たちの場所を把握した。 それにしても流石王宮だな、広さが半端ないや。とりあえずあっちに塀があったからそこから出よう。 そう思って俺は塀の方に向かった。 ただ明かりが無いところを通ってるって言っても塀までかなり距離があって、時たま兵士に出会しそうになった。 ………これは、姿見えないようにしといた方がいいか。 闇魔法 【暗幕】 魔法を発動させると、俺の体が闇に覆われる。これが『暗幕』の効果だ。 暗幕は闇を纏って暗闇に紛れる魔法。分かりやすく言えば、夜に黒い服を着ると見えなくなるのを魔法でしてるだけ。ただ欠点があって、昼間は使えない。 昼間でも姿が隠せる魔法を考えなきゃな…… 多分、今後は追われる身になるから 俺は『風読』と『暗幕』を使って何とか見つからずに塀にたどり着いた。 …この塀、どんなけ高いんだろう? 明かりがないから上が見えないや。 光魔法を使えば良いんだろうけど、こんな所で使ったら、どうぞ見つけて下さいって言ってるようなもんだ。 ここはこのまま飛び越えるか…… 風魔法 【飛翔】 頭の中で唱えると、風が俺の周りに集まる。風に押し上げられフワッと体が浮いた。 これは俺が一番夢見ていた魔法。空を飛ぶ魔法だ。と言っても、また風魔法を使って体を浮かすくらいしか出来ないけど。 俺は『飛翔』を使って塀伝いにどんどん昇っていく。しばらくしてようやくてっぺんに着いた。 この塀高すぎだろ。……でも魔法壁とかあると思ってたけど、そんなのは無いみたいだな。 俺は反対側に下りるとそう思って、もう一度塀を眺める。ふと水上と高峰の事が頭を過った。 ……あの二人は大丈夫かな?俺が逃げたことで当たりが強くならなきゃ良いけど。 とりあえず、俺が今からやることは情報収集だ。となれば、目的地はあそこしかないよな! 俺は気を取り直して、城下町に向かった。

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