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第21話
ふと目を開けるとまた状況が分からなくなる。横穴の入り口の方を見ると、射し込んでた光が無くなってる。腕時計を見ると午後3時過ぎを指してた。
………いつの間にかまた寝ちゃったんだ。でもさっきよりは疲れがましになってる。
「あ、起きた?」
自分の体調を確認してると、そう声がする。見るとさっきの人が立っていた。
「うん、さっきよりは顔色も良くなってるね」
その人はまた俺の前髪を避けて顔色を確認する。俺は思わず後退ってしまった。
っ!この人は、何でこんな距離が近いんだ!?
そんな俺を見て、この人はクスクスと笑う。
「スープを作ったんだけど、食べられそう?」
そう聞かれて俺は頷いた。その人は外で作ってたみたいで、『こっちに来て』と促される。
俺はそれに従って行こうとすると、体が上手く動かなくて少しフラついてしまった。
フラついた俺をその人が咄嗟に抱き止めてくれた。
「大丈夫?」
「…え、あ…大丈夫、です」
そう言うと、その人はクスッと笑う。その人はそのまま俺を支えて移動した。
………王子様ってこんな感じなのかな?
って、俺は何を考えてるんだ!?
ふとそう思って、俺は途端に恥ずかしくなった。
外に出ると焚き火がしてあって、その上に鍋が置かれている。俺は焚き火の近くに座らされた。
焚き火の近くに座ると火の熱が伝わってきて温かい。
「はい、どうぞ」
俺が火で温まっていると、器に入れられたスープを手渡される。
「あ、ありがとうございます」
そう言って俺はスープを受け取る。
「口に合えば良いんだけど」
その人は少しはにかみながらそう言う。
俺は受け取ったスープを一口飲んだ。スープを飲んだ瞬間、その温かさが体に染み渡って俺はホッと息を吐いた。
「……おいしい」
俺がそうボソッと呟くと、その人は嬉しそうに微笑んだ。
「良かった。あ、そういえばまだ名乗ってなかったね。俺はレイス、冒険者をやってるんだ」
レイスと名乗るこの人は『よろしく』と言って手を差し出す。俺はその手を迷うことなくガシッと掴んだ。
「冒険者って魔物と戦ったりするよね!?どんな魔物が居た?その装備だと剣士だよね!なんか技とかあるの!?剣には何か魔法が付与されてたりとか!?」
「ちょっちょっ、少し落ち着いて!」
そう言われて、俺はハッと我に返った。
「あ……ご、ごめんなさい」
そう言って俺は慌てて手を離した。
「君は冒険者に興味があるのかな?」
レイスさんはクスクスと笑いながらそう聞いてくる。
「ずっと憧れてて。会うことが出来たら聞きたい事が一杯あって………」
その冒険者が目の前に居て、思わず取り乱しちゃった。
「冒険者なんてそんなに珍しいものじゃないでしょ?」
俺の反応にレイスさんは不思議そうな顔をする。
確かに、この世界では冒険者は珍しいものじゃない。でも俺の世界では冒険者なんて架空の存在だから、会いたいと思っても会えなかった。
「……俺が住んでたところは冒険者が居なかったから珍しくて」
俺がそう言うと、レイスさんは『ふーん』と何か考え出す。
「うん、分かった。聞きたいことには答えてあげるよ。でもその前に、君の名前を教えてもらえるかな?」
そう言われて、俺は自分が名乗って無かったことに気付く。
「ご、ごめんなさい。俺はフタバっていいます」
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