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第22話
(レイスside)
数日前からキラータイガーがこの森に巣くってるという情報があって、俺はその調査と可能なら討伐の依頼を受けてこの森まで来ていた。情報ではアルザイル王国の近くに巣くってるらしい。
アルザイル王国にはあまり近付きたく無かったんだけどな。………まぁ、見つかることもないか。
そう思って、俺はキラータイガーの巣を探した。
キラータイガーは洞穴とかを好む。この辺でそういう場所だとあそこしかないよな。
俺はキラータイガーが居そうな場所に心当たりがあって、その場所に向かった。
しばらく歩くと目的の場所の近くまで来る。そこで人の気配を感じた。
木々が開けてその奥に横穴がある。その横穴はキラータイガーが巣にするには十分な大きさだ。
俺は姿を隠しながら、しばらく横穴が見える位置でキラータイガーが出てくるのを待った。
キラータイガーは夜行性だ、姿を確認するなら夜が良い。
姿を確認したら昼間、キラータイガーが寝てる隙をみて倒すつもりだ。
………それにしてもさっきから何かの気配がする。でも姿が見えない。
俺はその気配に注意を向けた。少し周りを警戒していると横穴の近くで何かが動いた。
………なんだ?
俺は目を凝らしてよく見てみるけど、上手く姿が見えない。でも何かが居るのは確かだった。
注意深く見ていると、さっきまで見えなかった筈の人の姿が急に見えるようになった。
……人?離れててよく分からないけど、少年みたいだな。
突然現れた少年に警戒しつつ様子を見ていると、少年が横穴に入っていった。
っ!まずい!
そう思って俺は急いで少年の元に走った。
俺の予想ではあの横穴にはキラータイガーが居る。ましてや今はキラータイガーが一番活動する時間帯だ。早くしないとあの少年が危ない。
そう思って横穴が飛び込むと、その少年は既にキラータイガーと対峙していた。キラータイガーは今にも少年に飛び掛かろうとしている。俺は少年の元に走ると、少年の腕を掴んで思い切り後ろに引っ張った。
俺が引っ張った拍子に少年が勢い良く倒れた。少年の事も心配だったけど、まずはキラータイガーを倒すことに専念した。
キラータイガーを倒して少年の元に駆け寄ると、少年は動かない。
「おい!大丈夫か!?」
そう呼び掛けても少年は反応したなかった。うっすらと開いていた目も次第に閉じてしまった。
もしかして、俺が投げ飛ばしたせいで打ち所が悪かったのか?……どうする?俺は回復魔法は使えないし、ポーションも持ち合わせていない。
そう思って俺は焦って少年の様子を見ると、少年から規則正しい息使いが聞こえてきた。
……………これはもしかして、寝てる?
それが分かって、俺は一気に力が抜けた。
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