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第28話

レイスが心配してくれてるのは分かる。でも俺は戻ることなんて出来ない。俺には『先に進む』って選択肢しか残されてない。 「………ありがとう、俺の事心配してくれて。でも、俺はもう戻ることが出来ないから」 「……何かあるのか?」 うん、やっぱり気になるよね。でも…… 「ごめん、今はまだ言えない」 気を悪くしちゃったかな。そう思ったけど、レイスは『そうか』と言うだけでそれ以上は聞いてこなかった。 「俺はこの後、依頼達成の報告にギルドに戻るんだ」 しばらく黙ってたレイスがそう言う。 「それって、アルザイル支部?」 「違う、さっき言ったここから一番近い国。レオーネ王国だ。」 レオーネ王国。レイスの話では、アルザイルより少し小さい国だけど、色々な種族が集まる豊かな国らしい。 色々な種族が集まるってことは、獣人やドワーフ、もしかしたらエルフとかにも会えるかもしれない。 俺はそう思って一瞬テンションが上がったけど、レイスの『無理だな』という言葉を思い出してテンションが下がった。 テンションが下がって俯いてる俺を見てレイスがクスッと笑った。 「俺は明日にもレオーネに向かうつもりだ」 俺はそう言うレイスを見る。 「フタバが良ければだけど、一緒にレオーネ王国に行くか?」 レイスは『そこで登録すれば良い』と言う。 「………良いの?」 「その方が俺も気にしなくてすむ」 元々一人で何とかするつもりだったけど、レイスが一緒なら俺も安心出来る。それに冒険者についても色々聞ける。 俺の答えは一つだった。 「よろしくお願いします」 そう言って、俺はレイスに頭を下げた。 そんな俺を見てレイスはクスクスと笑う。 「決まりだな。それじゃあ、明日に備えて今日はもう休むか」 そう言ってレイスは焚き火の後始末をし始める。 俺はずっと寝てたから眠くは無いけど、やっぱり体がまだ疲れてる。ステータスを確認すると、過労だった表示が疲労に変わってた。どうやら回復はしてるみたいだ。 でも、明日に響くといけないよな。 そう思って俺は休むと言うレイスに従うことにした。

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