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第33話
(レイスside)
ふと目が覚めるとフタバの姿が無かった。
どこに行ったかと思って少し慌てて周りを見回すと、洞窟の入り口付近が明るいのに気付いた。
なんだ?
俺は恐る恐る入り口の様子を伺った。
見ると、無数の火と水と雷と光の玉がゆらゆらと飛んで幻想的な光景が広がっていて、その中心にフタバが居た。
「フタバ!」
俺は飛んでいる玉を避けながらフタバの元に駆け寄った。
「レイス!?……ごめん、もしかして起こしちゃった?」
「いや……それより何だよ、これ!?」
そう言うと、フタバが何故か申し訳なさそうにする。
「………魔法の、練習」
「魔法?」
……これ全部フタバが魔法で出したのか?
火に水に雷に光。フタバは一体いくつの属性が使えるんだ?
そう思ってもう一度フタバを見ると、完全にショボくれている。
「……怒ってる?」
フタバがそう恐る恐る聞いてくる。その姿は叱られて耳の垂れてる動物みたいで、俺は思わず笑ってしまった。
「怒ってないよ。でも一言言って欲しかったな。起きたときフタバが居なくて正直焦った」
「……ごめん」
そう言って俯いてしまうフタバの頭を少し乱暴に撫でた。そうすると、フタバは驚いた顔をした後、ふにゃっと笑った。
弟が居たらこんな感じなのかな。
そう思ったら何かフタバが可愛く見えた。
「ところで、これは何をしてたんだ?」
そう言って俺はもう一度ふわふわと飛んでいる玉に目を向ける。
「複数の魔法を同時に使う練習」
「……ふーん」
フタバの口振りから、多分フタバは魔法を使いなれていない。魔術師だったら幼い頃から魔術の練習をし始めるけど、フタバは違うみたいだ。
……やっぱりフタバは謎だらけだな
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