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第38話

出来上がった鳥とキノコのスープを朝ごはんとして食べる。 レイスは美味しいと誉めてくれたけど、俺は煮て塩を入れただけだからちょっと複雑だった。 いや、美味しいんだけどね。なんか納得いかない。 ……レオーネに行けばもっと色々な調味料とか売ってるのかな。調味料が揃えばもっと色々作れるはず。 そう思って意気込んでいると、ふと疑問が過って俺はレイスを見た。 「……そういえば、レイスって魔法使えるの?」 そう聞くと、レイスはきょとんとする。 「魔法?」 「うん、レイスは魔法が使えるのかなって思って」 「使えないよ。俺は魔力を持ってないからな」 「え、じゃあ魔法が付与された魔道具も使えないんじゃ?」 魔法の使える世界では魔法を付与された武器が多く出回っている。例えば、剣に『斬』とか『鋭利』とかをイメージして魔法を付与すると切れ味が良くなるって感じだけど、大抵のものは持ち主がその武器に魔力を流して付与魔法を発動させるって物が多い。つまり、持ち主に魔力が無いと宝の持ち腐れだ。 「あぁ、だからこれもただの剣だ」 そう言ってレイスが自分の武器を手にする。 魔法も使えなくて、付与された武器も持ってなくてキラータイガーを一撃で倒す程強いの!? 「……レイスってランク何なの?」 「ランク?Aだけど?」 レイスがそう言った瞬間、俺はレイスの手をガシッと握った。 「凄い!!本物のAランク冒険者!まさか本当に会えるなんて夢みたいだ!」 冒険者にはランク付けがされている。その殆どがFランクから始まる。中にはEからの設定の話もあるけど。 ランクはFからS。FとEはまぁ見習い冒険者みたいなものだ。経験を積んで依頼をこなすとランクが上がる。Bランクまでは比較的ランクを上げやすいけど、AとSは一握りの存在だ。 冒険者に会いたいと思ってたけど、まさか一番最初に会えた冒険者がAランクだなんて信じられない。 「……ギルドカード。お願い!ギルドカード見せて!」 そう言って我を忘れてレイスに迫ると、レイスに顔を押さえられた。アイアンクローだ。 「少し落ち着け」 ぐいっと押されて引き離されて興奮を鎮められる。俺もそれで我に返った。 「……ごめんなさい」 俺が謝ると、ようやく顔を押さえてた手が外された。 興奮して暴走してのは俺だけど、もう少し優しい止め方は無かったのかな。 そう思いながら、俺は押さえられてた顔を擦った。

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