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第42話
意気揚々と出発したは良いけど………
「レイス……ちょっと待って……」
「まだそんなに進んでないぞ?」
そう言ってレイスはスタスタと歩いて行ってしまう。
「……そんな事……言われても……」
俺は慣れない森歩きで完全にバテていた。
元々運動らしい運動をしてこなかったうえに、異世界系のイベントに行く以外は殆ど家から出ない完全インドアの俺にはいきなりの森歩きはオーバーワークだ。
前を歩いてた筈のレイスは既に姿が見えない。
ちょっとくらい待っててくれても良いのに!
そう思いながら必死に歩いていると、茂みにしゃがみこんでるレイスを発見した。
「レイス……」
しゃがみこんでるレイスに声を掛けると、突然口を押さえられた。
「しっ!静かに」
そう小声で耳打ちされる。
「どうかしたの?」
口から手が離れた瞬間、小声のレイスに合わせて俺も小声で聞く。
「ゴブリンが居る」
そう言われて、俺は体がピクンと反応した。
「ゴブリンが居るの!?どこ!?」
ゴブリンと聞いて、俺は疲れてたのも忘れて身を乗り出した。
ゴブリンは異世界系の話には必ず出てくる定番中の定番。弱くて冒険者見習いが経験を積むために倒すような魔物だけど、それはあくまで1体だったときの話だ。
ゴブリンは高ランク冒険者にも恐れられてる。それはその数と武器を使う知能があるからだ。塵も積もればなんて言葉があるけど、まさにそれだ。
そんな事を考えながら、俺はレイスが見ていた方を見た。そこには5体のゴブリンが居て、その姿は俺の想像通りだった。まさかこんなに早く定番の魔物に会えるなんて。
ゴブリンに見入っていると突然頭を押さえつけられた。
「バカッ!頭を下げ………チッ」
上から舌打ちが聞こえてきて、押さえられてた頭が軽くなる。
「見つかった」
レイスを見ると、そう言って剣に手を伸ばすところだった。
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