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第43話
ゴブリンがギャアギャアと声を上げる。武器を持って臨戦態勢に入ってるみたいだった。
「……マズいな。仲間を呼んでる」
そう言うレイスからもピリピリとただならぬ雰囲気が漂う。俺は思わず息を飲んだ。
「フタバ、少し離れてろ」
そう言って体を押される。
「俺も戦う!」
魔物となんて戦ったことなんて無いけど、ゴブリンくらいなら。そう思った。
「足手まといだ!下がってろ!」
そう言われて、体がビクッと揺れた。
俺はレイスに従うしなかった。
少し離れた位置からレイスの様子を伺う。レイスは剣を抜いて戦闘態勢を取っていた。
………ここまでピリピリした空気が伝わってくる。息をするのも苦しい。
そう思っていると、茂みの方から新たにゴブリンが現れた。ゴブリンはあっという間に15体くらいに増えてしまった。
仲間が集まったことで準備が出来たのか、ゴブリンたちが一斉にレイスに攻撃を開始した。
「レイス!!」
危ないと思って思わず叫んでしまったけど、レイスは向かってきたゴブリンをあっという間に倒してしまった。
……これがAランク冒険者の実力。
俺は剣を振るうレイスに見入ってしまった。
ゴブリンを倒して戻ってきたレイスは、まだピリピリとした雰囲気をかもし出してる。俺はそれが少し怖くて思わず後退ってしまった。
そんな俺をレイスが睨む。
「相手がゴブリンだったから何とかなったけど、一歩間違えれば取り返しのつかない事になってた」
「…………ごめんなさい」
「もう勝手な行動はするな。それが守れないなら、俺はもう面倒見きれない」
そう言ってレイスは歩いて行ってしまう。
俺は少し離れて、レイスの後を追った。
レイスが怒るのも仕方ない。俺は戦闘経験は皆無だ。攻撃魔法も使ったことがない。
そんな俺が戦いに参加するなんて、出来るわけがなかった。
ここは今まで俺が思い描いてた架空の世界じゃない。少しの油断が死を意味する世界。いくら知識があったって、そんなの何の意味もない。
俺は前を歩くレイスをチラッと見る。
……レイス、すごい呆れてるよね。嫌われちゃったかな。
そう思ったら、すごく胸が苦しくなった。
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