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第49話

(レイスside) 「………なにそれ?」 食べ物を探しに行って戻ると、フタバが魔物と戯れていた。 「あ、レイスお帰り!」 そう言ってフタバは満面の笑みを浮かべる。 「で?これはどういう状況?」 「レイスが食べ物探しに行った後にあっちの茂みから出てきたんだ」 そう言ってフタバは茂みの方を指差す。 「あ、でも無闇には近付いてないよ」 そう言ってフタバはワタワタと慌て出す。多分ゴブリンの時に俺が言ったことを気にしてるんだろう。 「分かってるよ。ホーンラビットが人に懐いてるのがちょっと珍しいだけ」 「あ、やっぱりこの子ホーンラビットなんだ」 「知らなかったのか?」 そう聞くと、フタバは『んー』と唸る。 「そうかなとは思ったけど、俺実物を見るのは初めてだからどうかなって思ってた」 そう言ってフタバはホーンラビットを撫でる。 フタバの話では、じっとしてたら寄ってきたらしい。 基本、ホーンラビットは警戒心が強い魔物だから、人の気配があれば姿を現すことすら滅多に無いんだけど…… フタバには姿を見せるどころか触らせてる。本当に珍しい。 フタバには魔物に対する警戒心も殺気も無いからか? まぁ、ホーンラビットは人に危害を加えるような魔物じゃないし、フタバも嬉しそうだからしばらくこのままでも良いか。 「ほら」 俺はフタバに獲ってきた果物を渡す。 「ありがとう」 そう言って果物を受け取ると、フタバはじっとそれを眺めていた。 「これ何?」 「メリルの実だ。向こうに実ってるのを見つけた」 そう説明してみるけど、フタバはそれを食べようとはせずにじっと眺めるだけだった。 メリルの実は市場でも頻繁に出回る程珍しくもない果物だ。こうして森の中を少し探せば見つかるほど何処にでもある。それをフタバは珍しそうに眺めている。 フタバはメリルの実を知らないのか?

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