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第50話
レイスに食べろと渡されたのは真っ黒な5cmほどの大きさの球体だった。
レイスにこれは何かと聞いたら『メリルの実』と返ってきた。
どっからどう見ても、ただの黒い玉………
これが果物なんて信じられない。
………本当に食べられるのかな?
そう思ってレイスを見る。
「美味いから食べてみろ」
そう言ってレイスはメリルの実に噛りついていた。それを見て、俺も躊躇しながら恐る恐る噛ってみた。
そうすると甘酸っぱい味が口の中に広がる。
「………美味しい」
「だろ?」
そう言ってレイスがニコッと笑った。
何だろう、これ。リンゴっぽいけど何か違う。でも嫌いじゃない。
そう思いながら食べてると、ホーンラビットがメリルの実を気にするように鼻をヒクヒクと動かす。
「お前も食べる?」
そう言ってホーンラビットの口元にメリルを持っていくと匂いを嗅いだ後、カシカシと食べ始めた。
ヤバい!こいつ可愛い!
「美味いか?」
ホーンラビットに向かってそう聞くと、ホーンラビットは返事をするかのように『キュッ』と鳴いた。俺はそれで完全に射抜かれた。
………こいつ連れてけないかな。
そう思ってレイスをチラッと見る。
それに気付いたレイスが顔をしかめた。
「駄目だぞ」
レイスは何かを察したようにそう言う。
「……まだ何も言ってないよ」
「どうせそいつを連れて行きたいとか言うんだろ?」
そう言われて、体が跳ねた。
そんな俺を見てレイスはため息をつく。
「そいつは大人しくても魔物だ。テイムしたならまだしも、そうじゃないなら連れてくことは出来ない」
「魔物ってテイム出来るの!?」
そう言ってレイスに掴み掛かると、『落ち着け』と言われて押さえ込まれた。
「お前!ただでさえ疲れて動けないのに、興奮したら余計に動けなくなるぞ!」
「………ごめん」
そんな俺を見て、レイスはまたため息をつく。
「魔物をテイムするのはテイマーにしか出来ない。魔術師のお前には無理だな」
「………どうやったら覚えられる?」
「テイマーは先天性の職業だ。生まれた時から備わってるものだ。後から学んで得られるものじゃない」
ん~、やっぱりテイマースキルって習得するの無理なんだ。
そう思って肩を落とす。俺はホーンラビットをチラッと見た。
「………分かった、諦める」
そう言うと、レイスは俺の頭をポンポンと叩いた。
レイスは連れてくのは無理だけど、出発するまでならとホーンラビットと一緒に居ることを許してくれた。
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