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第55話
ふと目を開けると、見覚えの無い場所に居た。
……ここ、どこだろう。
そんな事をぼんやりと考えるけど、頭が上手く回らない。
「気がつかれましたか?」
そう声がして見てみると、見知らぬ女の人が立っていた。
「……あなたは?」
「私はミーヤと申します」
その人は名乗ってくれたけど上手く頭が回らなくて、その人が何を言ってるのか上手く理解出来ない。
「まだ回復していません。もう少し眠ってください」
そう言ってその人は俺の目に手を置く。目を塞がれた俺は、次第にまた眠りに着いた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〈レイスside〉
「どうだ、フタバの様子は」
俺はフタバの看病してくれてるミーヤに声を掛けた。
「先ほど一度目を覚まされましたよ。まだ回復しきっていないので今はまた眠っていますが、もう大丈夫ですよ」
「……そうか」
そう聞いて、俺はホッと息を吐いた。
俺は眠っているフタバ見ると、そっと額にかかった髪を避けた。
少し前とは打って変わって穏やかな寝顔に、俺は自然と笑みが溢れた。
「随分と彼の事を気にかけていらっしゃるんですね。あんなに慌てたレイスさんは初めて見ましたよ」
そう言ってミーヤはクスクスと笑う。
「……そうだな。フタバは危なっかしくて目が離せない」
「大切に思われているんですね」
「……大切か。そうだな、強いて言えば弟みたいなものかな」
「…………弟、ですか?」
そう言ってミーヤは少し驚いたような顔をする。
「どうかしたか?」
「……いえ。それじゃ私は一度戻りますので、何かあったらまたお呼び下さい。あ、レイスさんもちゃんと休んで下さいね」
そう言ってミーヤは部屋を出ていった。
俺は置いてある椅子をベッドの横に移動させてそれに座ってフタバの寝顔を眺めた。
俺はそっとフタバの頬に触れる。
触れたところからフタバの体温が伝わってきた。
フタバが倒れた時、またあの時みたいに何も出来ずに失うのかと思った。
そう思ったら、すごく怖かった。
………フタバが無事で良かった。
そう思って、俺はギュッとフタバの手を握った。
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