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第57話
レイスがスッと離れて俺の腕を取って袖を捲った。そこにはガーゼが張ってあった。
……あ、森で切ったところ、ちゃんと治療してある。
「何で黙ってた?」
「え?」
「怪我したこと、何で黙ってた?」
そう言ってレイスは俺をみる。
「…怪我って、ちょっと切っただけだよ」
「そのちょっとの事が命取りになることもあるんだ」
レイスはそう言うと、俺の腕を掴む手に力がこもる。
レイスは何を怒ってるんだろう。
確かに日本でも小さい傷でもバイ菌が入って悪化する事があるけど、命に関わるなんてことはない。こんな小さな傷、気にすることないのに。
そんな時、コンコンとドアがノックされて女の人が入ってきた。
「失礼します……ってどうしたんですか!?」
その人は俺たちを見て驚いた顔をする。
「……何でも無い」
そう言ってレイスが俺から離れた。
それを見て、レイスと入れ違いでその女の人が傍に来た。
「気分はいかがですか?」
そう言ってその人が俺の前にしゃがむ。
「……あ…大丈夫、です」
何だろう。この人、会ったことがある気がする。
そう思って見ていると、その人がニコッと笑った。
「私の事は覚えてますか?」
「……え?」
「先日、一度会ってるんですよ」
そう言われて思い出そうとするけど、思い出せない。
「あの時はまだ意識がハッキリしてなかったですからね」
そう言ってその人は笑う。
「では改めて、私はミーヤと言います」
『よろしくお願いします』と言って、ミーヤさんは手を差し伸べる。
「……えと……フタバです」
俺はその差し出された手を、少し躊躇しながら握った。
「少し傷の具合を見させて下さい」
ミーヤさんはそう言って、そのまま俺の服の袖を捲った。
「……ミーヤ、後は頼んだ」
ミーヤさんが俺の傷を診始めると、レイスがそう言って部屋から出ていってしまった。
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