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第58話
俺は出ていってしまったレイスの姿を追ってドアを眺める。
レイスは何であんなに怒ってたんだろう。
………俺が何かしちゃったのかな。
「フタバさんは毒のせいで3日間昏睡状態だったんですよ」
そんな事を考えていると、ミーヤさんが傷の手当てをしながらそう言う。
「……毒?」
「この傷はレガン草の葉でできた傷です。レガン草は毒草で、その草で着いた傷からはどんな小さい傷でも毒が体内に混入します。比較的弱い毒なのでそこまで危険視されてませんが、耐性の無い方にこの毒が混入してしまうと命に関わることもあるんです」
ミーヤさんは俺を見てクスッと笑う。
「レイスさん、すごく心配してたんですよ。普段落ち着いてる方がすごく慌てて飛び込んで来たんです。その後もずっとフタバさんに付きっきりで」
俺は、小さな傷だから大丈夫って思って……
レイスがそんなに心配してたなんて思わなかった。
「……すいません。俺、ちょっと行ってきます」
そう言って俺は部屋を飛び出した。
………家の中には居なかったから多分外に居る。
そう思って、俺はレイスを探して走った。
………って、勢い良く飛び出してきたは良いけど………ここって何処!?
俺はレイスを探しながら走ってたら、いつの間にか広場みたいな所に出た。持久力の限界で立ち止まって回りを見てみると、全く見知らぬ場所に居ることに気付いた。
来た方向は分かるから、戻れば良いのかな?
そう思って来た方向に戻ってみるけど、そもそも元居た所が何処なのかも分からなかった。
………どうしよう。完全に迷っちゃった……
俺はその場にしゃがみ込む。
元の世界だったらスマホとか使って連絡取ったりとか出来るのに………
ここが何処かも分からないし、元居た場所も分からないし…………俺、戻れないのかな?
そう思ったら、不安になってきて俺はギュッと手に力がこもった。
「………フタバ?」
そんな事を考えていると俺の名前を呼ぶ声がして、見るとレイスが立っていた。
「フタバ、どうしてこんな所に!?」
そう言ってレイスが駆け寄ってくる。俺は無意識にレイス抱き付いた。
「どうした。何かあったのか?」
そう言ってレイスが抱き付く俺の背中をポンと叩く。
「………迷って、戻れないと思った」
俺はレイスを抱き締める手に力を入れた。
この手を離したら、もう戻れないんじゃないかと思ってまた不安に駆られる。
「もう大丈夫だ」
そう言って、レイスは俺の背中を優しく擦ってくれる。
俺はレイスの体温を感じて、さっきまでの不安が嘘のように消えていた。
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