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第60話

「ねぇ、本当に重くない?」 俺はレイスにおんぶされて、元居た場所まで戻ってる最中だった。 「大丈夫、重くない。むしろお前軽すぎ、もう少し肉を付けた方が良いぞ?」 ってレイスは言うけど、絶対嘘だ。 俺そこそこタッパはあるから、体重だってそれなりにある。 まぁ、筋肉が無いから周りからひょろいとは言われたことあるけど…… でもレイスの方が身長高いから、いつもと目線が違って少し新鮮だな。 ………てか、周りの人にめっちゃ見られてる。やっぱり恥ずかしい。 そう思って、俺はレイスの肩にくっつけて顔を隠した。 そうこうしている内に元居た場所まで戻ってきた。 俺は建物の前で誰かが立っているのに気付く。 ……あ、ミーヤさんだ。 ミーヤさんが俺たちに気付くと駆け寄ってきた。 「フタバさん!?どうされたんですか!?」 そう言ってミーヤさんが心配そうに俺の頬に触れる。多分、俺がレイスにおぶられてるからだ。 「えっと……」 「ミーヤ、大丈夫だ。フタバは疲れて動けなくなってるだけだから」 『いつもの事だ』とレイスが言うと、ミーヤさんは安心したように笑った。 俺たちが部屋に戻るとミーヤさんがお茶を淹れてくれた。俺はそれを一口飲んでみた。 ………これは何のお茶なんだろう?紅茶みたいだけど、ちょっと違う。少し独特な風味があって、でも後味が甘い。 お茶を飲んで落ち着くと、ミーヤさんが色々と説明してくれた。 ここはレオーネ王国の中心都市で、王国の中では一番大きな都市で国境とも隣接している。王宮もこの都市にあるらしい。 で、今居るこの建物は冒険者が泊まれるようにと冒険者ギルドと提携している宿だ。 話も気になるけど、それよりも俺はミーヤさんに釘付けだった。 「………フタバ見過ぎだ」 俺はレイスの言葉にハッと我に返った。 二人を見ると、レイスは呆れた顔で、ミーヤさんは苦笑いをしていた。 「そんなに珍しいですか?」 ミーヤさんが少し困ったようにクスッと笑いながら言う。 「す、すいません。初めてだったので」 確かに女の人をジロジロと見るのは失礼だよね。 でも仕方なくない!? だってミーヤさん、猫の獣人なんだもん! 付け耳じゃなくてリアルネコミミだよ!? あれだけ会いたいと思ってた獣人が目の前にいるのに見ないわけないじゃん! それどころじゃなかったとはいえ、なんで最初に気付かなかったんだろう!? 俺はそれが悔しくて、クッとこぶしを握った。 「………フタバさんは、獣人愛好家なんですか?」 そう言って、ミーヤさんの表情が曇る。 「獣人愛好家?」 「…フタバさんは獣人に興味があるんですよね?……その…獣人を傍に置きたいとか、考えていますか?」 ミーヤさんは多分、かなり言葉を選んで話してる。 でも俺はそれだけで、ミーヤさんが何を聞きたいのか何となく分かった。 「そんな事は考えた事無いです。確かに獣人には興味あるけど、それは俺が人以外の他種族に会ってみたいってだけで、その人たちの生活を壊そうとは思わないし、ましてや傷付けようとするなら許さない」 異世界系の話に出てくる獣人は、どれも虐げられる存在として描かれてる事が多い。 その見た目から奴隷やペットとして扱われたりする。多分、この世界でも……… 「俺は、出来るなら仲良くなりたいんです。どんな生活してるかとか、そんな話が出来たら嬉しい。ミーヤさんとも仲良くしたいです」 俺がそう言うとミーヤさんは驚いたような顔をした後、フワッと笑った。 「私も、フタバさんと仲良くなりたいです」

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