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第73話
俺はレイスに連れられるまま、宮内を歩いていた。
白を基調として所々に装飾品はあるものの、アルザイルの王宮と違って嫌味を感じない。
なんだろう、調和が取れてるからかな。
アルザイルの王宮は正直、趣味が悪いと思っていた。でもここは嫌いじゃない。
……ってそうじゃなくて!
ここが本当に離宮だったら、ここに居るのは王族の誰かってことになるんだよね。
…………出来れば、王族とは関わるのは嫌なんだけどな。
そう思って、俺は小さくため息をついた。
「どうかしたか?」
そう言ってレイスが覗き込んできた。
「あ、ううん。何でも無いよ」
俺は慌てて首を振った。
そういえば、レイスは何でここに来たんだろう。ここに魔法を教えてくれる人が居るのかな。それに離宮とはいえ、こんな簡単に王宮の敷地内に入れるなんて……もしかしてレイスって凄い人!?
そんな事を考えながら歩いていると、廊下の奥に人が立ってるのが見えた。
「お久し振りです、レイス…さん」
その人は胸に手を当てて、レイスに向かってお辞儀をする。
裾に刺繍の入った燕尾服姿、多分この離宮の主の従者。
そう思って見ていると、その人と目が合う。その瞬間、その人がニコッと笑う。
「初めまして。私はディルハルト様の従者をしてますリオと申します」
そう言ってリオと名乗る人は、今度は俺に向かってお辞儀をした。俺は慌ててお辞儀を返す。
「は、初めまして。フタバです」
俺が名乗ると、リオさんはまたニコッと笑った。
「ここからは私がご案内させて頂きます」
そう言ってリオさんは『こちらへ』と手で方向を示した。
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