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第80話
もう一度再戦しろとディルがゴネる。
それにはレイスも少し困ってたみたいだ。
そんな二人にリオさんがため息をつきながら近付いた。
「ディル様、今日はこの辺で」
とリオさんがゴネるディルを宥める。
「うるさい!次は絶対に勝………っ!」
ディルがそう言いかけた瞬間、体をビクッと震わす。次の瞬間、ディルの顔が青ざめていった。
レイスを見ると、レイスも顔色を悪くして目を逸らしている。
………どうしたんだろう。
「…ディル様?」
そう思った瞬間、リオさんから物凄く冷たい声が響いてきて、俺は背筋が凍るような錯覚を覚えた。
「今日はここまでです。宜しいですね?」
そう言うリオさんをチラッと見ると、笑顔なのにその後ろには、黒い何かが見えたような気がした。
ディルがリオさんにコクコクと頷くと、その黒い何かがスッと消えた。
……………何だったの、今の?
俺はどさくさに紛れて離れたレイスに駆け寄った。
「……もしかして、リオさん怖い人?」
そう小声でレイスに聞いてみる。
「……リオには誰も勝てない」
そう言ったレイスの顔は引きつっていた。
「さぁ、皆さんも中に入りましょう」
そう言ってリオさんはニコッと笑う。
俺の中で、リオさんは『怒らせたらダメな人』とインプットされた。
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