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第82話
俺たちはしばらく滞在する拠点として、ディルにお世話になることに決めた。
本来なら王宮を拠点にするなんてあり得ない事なんだけど。
俺たちは移動の準備をするために一度、宿に戻るために離宮を後にした。
……さっきまで王子様に会ってたなんて、何かまだ信じられないな。
そう思って、俺はため息をついた。
「大丈夫か?」
そうレイスが聞いてくる。
「うん、大丈夫」
「今日は色々あったから疲れただろう。宿に戻ったらゆっくり休むと良い」
そう言うレイスに、俺は頷いた。
冒険者登録にギルド名物、王子様との顔合わせ。本当に色々あったな。
……何か、結構な重要イベントを一気に経験した感じ。
俺は今日1日の事を思い出して息を吐いた。
それに、一国の王子であるディルと幼い頃からの友人だって言ったレイス。
最初は高ランクの冒険者だから皇子様と友人になれたんだと思ってたけど、幼い頃ってことはレイスが冒険者になる前からの知り合いって事だよね。
王子様と友人関係になれるのなんて、同じ立場か相当位の高い貴族。じゃなければいくら幼馴染みでも、あんなに気安く接するなんて出来ない。それにレイスは俺に何か隠してる気がする。
俺はチラッとレイスを見た。
話してくれれば良いんだけどな。
……って、何考えてんだろう。
俺だってレイスに隠してることある癖に。
自分は隠してる癖にレイスの事は知りたいなんて虫がよすぎるよね。
そんな事を考えてるうちに宿に到着した。
中に入ると、レイスが引き払いの手続きをする。
既に10日分の料金を支払ってたから、その差額の払い戻しで少し手間取ってるみたいだった。
「あ、レイスさん!」
ようやく手続きを終えて部屋に戻ろうとすると、受付の人にレイスが呼び止められた。
「すいません。伝言を預かっていたのを忘れてました」
「伝言?」
「フレディさんって方が向かいの店にいるから来てほしいとのことです」
「……フレディが?」
伝言を聞いたレイスが俺を見る。
「悪い、急用が出来た。フタバは先に部屋戻って休んでてくれ」
フレディさんって誰だろう?
レイスが慌てるくらいだから、親しい人なんだろうな。
………名前の響きからして、多分女の人。
そう思った瞬間、胸の奥がチリッとした気がした。
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