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第85話

「カザシロ様!?」 そう女の人の声が聞こえて、俺は動きを止めた。 「……え?」 何で、俺の名前……? 見ると、レイスもそれに驚いてるようでその人の方を見ていた。 レイスと一緒に居た人が近付いて来る。 「カザシロ様、ご無事だったのですね」 「………何で、俺の事……?」 そう言うと、その人は被っていたフードを取った。 そこから出てきたのは、レイスより濃い赤。 フードが取れた姿は、俺が見たことのある人だった。 「……ぁ……王女、様…?」 何で王女様がここに?それも、レイスと一緒に……? 俺は、レイスと王女様と一緒に席に着いていた。 レイスと一緒に居た人の正体は、アルザイル王国第一王女、フレデリア・アルザイル。 「ご無事で良かったです。カザシロ様が出ていかれた後、どうしてるのかと心配だったんです」 そう言って王女様はニッコリと微笑む。 「……王女様はどうしてここに?」 「あ、私の事はフレディとお呼びください」 そう言われて、俺はため息をついた。 「フレディはどうしてここに?」 「お兄様に会いに来たんです」 そう言ってフレディがレイスを見る。 俺もそれに釣られてレイスを見ると、レイスは少し難しい顔をして黙ったままだった。 まさかレイスがアルザイル王国の王子だとは思わなかった。 フレディの話では、レイスは4年前、成人すると同時にアルザイルを出てこのレオーネで身分を隠して冒険者になった。レイスが王子だということは、一部の人しか知らないらしい。当然、ディルとリオさんもこの中に入っている。 レイスとディルがあんなに気安かったのも、レイスが同じ王子という立場だったからなんだ。 「……悪かった、黙っていて」 そう言ってレイスが申し訳なさそうにする。 「え、いや、俺は大丈夫だよ。それに、俺も黙っていたから」 そう、フレディが来たことによって、俺が召喚者だって事がレイスに知られてしまった。 「でもフタバが召喚者だとは思わなかった。それもフレディが喚んだなんて……」 レイスがそう言うと、フレディの表情が曇る。 「…それについては、謝罪をしなければいけないと思っていました。」 「……謝罪?」 「はい、私は国王に命令されるがまま、あなたの望まぬ召喚を行いました。 申し訳ありません。心より謝罪いたします」 そう言って、フレディが頭を下げてきた。 何故かレイスも一緒に俺に頭を下げた。

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