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第87話

(レイスside) まさか、フタバが召喚者だとは思わなかった。それもフレディが喚んだとは…… フタバが魔法や魔物に関しての知識はあるものの、基本的な知識が無い事、文字の読み書きが出来ない事、読めない文字を書く事、この世界には無いはずの魔法を使うことや、無詠唱で魔法を使うこと。 フタバが召喚者だからと言われれば、全ての事が納得いく。 ……でも、何であの人は勇者召喚なんて? 勇者召喚は本来、世界に危機が訪れたときに行う儀式。それも何人もの賢者クラスの魔導師が集まって行うもの。 それをフレディ一人にやらせるなんて…… 魔力量が人の何倍もあるフレディだから良かったものの、下手すれば死んでいたかもしれない。 ……あの人はフレディが死んでも良かったのか。 そう思って、俺はギュッと拳を握った。 あの人は召喚した勇者を使って何をしようとしてるんだ。 フレディの話では、王国の危機だと言ってたらしい。 王国の危機とは何なんだ?そもそもあの人が王国の為に動くわけがない。常に自分の事しか考えてない人だ。何かとんでもない事を企んでる気がする。 もし、その企みに勇者を使うとしたら、フタバも巻き込まれ兼ねない。 今は干渉してこないけど、今後はもしかしたら連れ戻しにくるかもしれない。 だとしたら、俺一人でフタバを守るのは難しい。 …………頼んでみるしかないか。 そんな事を考えていると、隣から楽しそうな声が聞こえてきた。 見るとフタバとフレディが楽しそうに話してる。フレディもさっきまで泣いてたのが嘘のようだ。 俺はその光景を見て、自然と笑みが溢れた。 「カザシロ様、カザシロ様は………」 「あ、その『カザシロ様』は止めて?俺の事は『フタバ』で良いよ」 とフタバがフレディに言う。俺はふと疑問に思った。 「フタバ、その『カザシロ』ってなんだ?」 俺がそう聞くと、フタバはきょとんとした。 「あ、そうか、レイスには『フタバ』としか名乗って無かったね。『カザシロ』は俺の苗字………この世界では家名になるのかな?俺の本当の名前は『風城 双葉』だよ。」 そう言ってフタバはニコッと笑った。 「………『カザシロ』がお名前では無いのですか?」 とフレディが不思議そうに聞く。 「フタバが名前でカザシロが家名だよ。こっちの世界ではフタバ カザシロが正解なのかな?」 そう言って、フタバが笑った。 フタバ カザシロ それがフタバの本名なのか……

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