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第90話

ロイドさんは元レイス付きの騎士兼従者だったらしい。レイスが城を出てからフレディ付きの騎士になったそうだ。 「フタバ様が城を出ていかれたことをフレデリア様は大変気にしておられました。まさかレイス様とご一緒だとは思いませんでしたよ」 そう言ってロイドさんは笑う。 「………あの…」 「どうかされましたか、フタバ様」 「その『フタバ様』っていうの、止めてもらえませんか?」 「え?」 「俺は『様』なんて付けられる立場ではないので。『フタバ』と呼んでください」 「いえ、それは出来ません。勇者であるフタバ様を呼び捨てになんて出来ませんよ」 ロイドさんはそうキッパリと言う。 「…俺、勇者じゃないですよ」 「いえ、貴方は立派な勇者様です」 そう言ってロイドさんはグッとこぶしを握った。 ……何でこの人はこんなに俺が勇者であることに拘るんだ? そう思って、俺はため息をついた。 その様子を見て、レイスがクスクスと笑った。 「ロイドは勇者に憧れているんだ。昔、実際に存在した勇者の話が今は物語として語り継がれてる。ロイドは子供の頃にその話を聞いて憧れて、勇者は無理だからって騎士になったんだよ」 レイスはそう言って、ロイドさんに『なぁ?』と振る。 「はい!まさか、本物の勇者様に会えるとは思ってもみませんでした!」 とロイドさんはテンション高めに言う。 あー、そういう勇者の話って一度は憧れるよね。俺も子供の頃、話に出てくる勇者に憧れてたっけ。 俺の世界では勇者なんて存在しないから、ある程度大きくなればその憧れも冷めるけど、この世界じゃ実際に勇者が存在してるから大人になってもその憧れはそのままなんだな。 「でも何で俺なんですか?勇者なら水上が居るのに」 水上は文字通り、本物の勇者だ。 「それは、物語で語り継がれてる勇者様が賢者の称号を持つ魔術師だったんですよ」 とロイドさんが目を輝かせて言う。 俺はそれを聞いて納得した。

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