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第96話
「もしかしたら召喚者の特殊能力みたいなものかもしれないな」
レイスがそう言う。
あー特殊能力かぁ。それなら納得かなぁ。
他の召喚者よりレベル高かったり、この世界には存在しない魔法が使えたり。
やっぱり俺ってチートなのかな。
………って、それも上手く使いこなせなければ宝の持ち腐れなんだけどね。
でも今はそんな事より。
「ねぇレイス。これでルディは俺の従魔になったんだよね?もう連れて歩いても何も問題ないんだよね?」
「ギルドにルディの事を登録すれば大丈夫だ」
『明日にでも登録に行こう』と言って、レイスは俺の頭を撫でた。
その後、ロイドさんとフレディはアルザイルに帰っていった。
俺とレイスも宿に戻っていた。
「悪かったな」
宿に戻るために歩いていると、レイスが唐突にそう言う。
「え?」
「俺が王族だって事、黙ってて悪かった」
そう言って、レイスが目を伏せる。
「理由があったんでしょ?」
そう聞くと、レイスは黙ってしまった。
俺には言えない事。
多分、レイスは今回の事が無かったら自分が皇子だってことも俺には隠してたと思う。
俺は、騒動に巻き込まれたくないと思って城を出た。でも多分、今俺が居るのはその騒動の真っ只中。
……いや、勇者として召喚された時点で回避は無理だったのかもしれない。
「……俺、自分が召喚者だって事、レイスには何回も話しても良いかもって思った」
俺が話始めると俯いてたレイスが俺を見る。
「でも何となく、話さない方が良いのかなって思って話せなかった」
「それであってる。この世界で勇者は、本人の意思とは関係なく神格化される。そうなれば自由なんてなくなる」
『だから言わない方が良い』とレイスは言う。
騒動に巻き込まれるのは嫌だ。
自由に冒険したい。
でも多分レイスは、何かあれば一国の王子として動く。
その時、俺はどうすれば良いんだろう。
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