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第98話
(レイスside)
ギルドに着くと、ミーヤにルディの登録を頼んだ。
「……フタバさんの従魔、ですか?」
ミーヤがそう言って驚いた顔をする。
無理もない、魔術師であるフタバが従魔契約出来るなんて誰も思わないだろう。
「ちゃんと契約の紋様も現れてるから間違いないだろう」
俺がそう言うと、ミーヤは納得は出来ていないものの、登録の手続きをしてくれた。
フタバはルディの名前が記されたギルドカードをルディに見せて喜んでいた。
「……ミーヤ、悪いがこの事は他には黙っててくれるか?」
フタバには気付かれないようにミーヤに言う。
「訳ありですか?」
そう聞かれて、俺は頷いた。
「分かりました。この事は他言しないようにしておきます」
「……悪いな」
そう言うと、ミーヤはニコッと笑った。
ルディの登録を済ませた俺たちは、ディルの所に向かうべくギルドを後にした。
フタバはルディを抱っこしてルディにずっと何かを話しかけている。
ルディもフタバに答えるように『キュッキュッ』と鳴いている。
その姿が微笑ましくて、俺は自然と笑っていた。
離宮に着くと、俺は門番に話をして中に入った。しばらく宮内を歩くとディルとリオの姿を見つけた。
「遅かったな」
出迎えてくれたディルがそう言う。
「こいつの登録の為にギルドによってたんだ」
俺がそう言ってルディを指差すと、ディルが『こいつ?』とルディに視線を向けた。
「…ホーンラビット?何で魔物なんか連れてきたんだ?」
ディルがフタバにそう聞く。
「この子はルディっていうんだ。俺の従魔だよ」
とフタバは満面の笑みでディルにルディを紹介していた。
「フタバさんの従魔ってどういう事ですか?」
その様子を見ていたリオがそう聞いてきた。
「フタバがあのホーンラビットをテイムしたんだ」
『詳しいことはまた後で話す』と言うと、リオは『分かりました』と頷いた。
その後、リオはフタバに話し掛けにいった。フタバはリオにもルディを紹介していた。
「フタバの従魔ってどういう事だ?」
とリオと入れ違いにディルも聞いてきた。
「その事も含めて、話したい事がある。今日の夜にも時間を作ってもらえないか?」
「……何かあったのか?」
「"特令"にあたる案件だ」
そう言うと、ディルの表情が険しくなった。
『特令』は王族が使う用語で『緊急事態』を意味する。
「特令なら今話さなくても良いのか?」
「特令といっても、急を要する訳じゃない。でも耳に入れておいた方が良いと思った」
「なら今からでも」
そう言うディルに、俺はリオと楽しそうに話すフタバに視線を向けた。
「いや、夜で頼む。フタバがリオに魔法を教わるのを楽しみにしている。それを潰したくはない」
それにこの話はまだフタバには聞かせたくない、そう思った。
そんな俺にディルはため息をつく。
「分かった。夜に時間を作ろう」
「助かる」
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