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第103話

(レイスside) いつの間にか居なくなってたフタバを探して宮内を歩いていた。 まったく、少し目を離した隙にどこに行ったんだ。 そう思って歩いていると、庭園に差し掛かった。 ここは観賞用の庭で色とりどりの植物が植えられていて、噴水や東屋とかもある。 王宮の庭園ってこともあって、いかに離宮といってもその仕上がりはかなり見事だ。 俺はその庭園を眺めながら歩いていた。 しばらく歩くと、庭園の方から『キュッキュッ』と何かの鳴き声が聞こえてきた。 ……この鳴き声はルディだな。 ということは、フタバも近くに居るのか。 そう思って外に出てみると、すぐ傍にフタバが座っていた。 地面に座っているフタバに、俺は一瞬驚いた。 フタバに声を掛けると、フタバは俺を見てニコッと笑った。 何でこんな所に座っているのかと聞きながら俺もフタバの横に座った。 すぐ近くに椅子が置かれてるのに、何故そこに座らないのか不思議だった。 フタバに理由を聞くと『豪華すぎて使えない』と返ってきた。 庭園に置かれてる椅子は屋外用ってこともあって、室内に置かれてる椅子よりはシンプルなデザインになっている。フタバはそれでも豪華だと言った。 そういえば、俺はフタバの事を何も知らないんだよな。 フタバが召喚者と知って、思うことがあった。 フタバは元の世界でどんな生活をしていたんだろう。 フタバの周りにはどんな人が居て、どんな物があったんだろう 俺がフタバの世界を見ることは、どう頑張っても叶うことはない。 フタバが今まで生きてきた世界を、俺は一緒に共有する事が出来ない。 何故かそれが悔しかった。 フタバはフレディに、召喚されたことは感謝していると言っていた。 本当にそう思っているんだろうか。いきなりこんな訳の分からない世界に召喚されて、何も知らない場所に一人で放り出されて。 「フタバ、フタバは元の世界に帰りたいと思うか?」 「え?」 そう聞くと、フタバはきょとんとする。 「フタバは元の世界に帰れるとしたら、帰りたいと思うか?」 もう一度聞くと、フタバは考え出す。 「どうだろうな。もしその時になったら悩むかもしれないけど、今は帰りたいって気持ちは無いかな」 そう言うと、フタバは俺を見てニコッと笑う。 「俺ね、今すごく楽しいんだ。こうしてレイスと一緒に居れて、リオさんに魔法を教えて貰えて、ディルやフレディ、色んな人に出会えて。もっと色んな事が知りたい。もっと色んなものを見てみたい。 俺、こう見えても結構貪欲なんだよ。この世界でやりたい事が沢山あるし、帰りたいなんて思う暇無いよ」 「騒動に巻き込まれるかもしれないぞ?辛い思いをするかもしれない」 「だろうね。まぁそれは、召喚された者の宿命っていうか…… でも今はまだ何も起きてないし、そういうのはそうなった時に考えれば良いかなって」 そう言ってフタバは笑う。 本当、フタバは楽観的というか何というか…… そう思って、俺は思わず笑ってしまった。

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