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第109話

(レイスside) ディルとリオと話していたら、かなり遅い時間になってしまった。 だけど、協力は取り付けられた。 そんな事を考えながら廊下を歩いていると、窓際に立つ人影を見つけた。 近付くにつれて、その人の顔がはっきり見えた。 「フタバ?」 フタバは窓際に立って、外を眺めていた。 俺が声を掛けると、フタバが笑顔になる。 「レイス、ディルと話は終わったの?」 そう言って、フタバが駆け寄ってきた。 「あぁ、ついさっきな。それよりまだ寝てなかったのか?」 「…うん」 そう頷くフタバは、どこか浮かない顔をしていた。 「どうかしたのか?」 「あ、いや……部屋が広すぎて、なんか落ち着かなくて」 『気晴らしに散歩してた』とフタバは言う。 「でもそろそろ休まないと、明日に響くぞ?」 「……うん」 フタバは頷くものの、そこから動こうとはしない。 俺はそんなフタバにため息をついた。 「俺のところに来るか?」 そう言って手を差し伸べると、フタバの表情が一気に明るくなって、俺の手を握ってきた。 「うん!」 部屋に戻って入浴を済ませると、フタバがまた窓の外を見ていた。 「何かあるのか?」 そう言って、俺も一緒に窓の外を覗いてみる。 でもこれといって変わったものは無い。 「月がキレイなんだ」 「…月?」 「うん、この世界の月はすごく大きくて少し赤み掛かってる。すごくキレイ」 そう言ってフタバは、また月に視線を向けた。 俺に取っては見慣れた月だけど、フタバには珍しいものらしい。 「フタバの世界の月は違うのか?」 「俺の世界の月はもっと小さくて、どちらかと言うと黄色っぽい色かな」 「そうなのか」 そう言って俺ももう一度月に視線を向けた。

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