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第116話

俺はレイスを気にしつつ、今までの事を話した。 召喚されたときの事、勇者になる事を断って牢に入れられた事、そこからどうやって抜け出したかを話した。 「……どうしてフタバは勇者になる事を拒んだんだ?勇者になりたかったんだろう?」 ディルにそう聞かれて、俺は少し考える。 確かに勇者には憧れてた。 でも、いざそういう立場になった時、なんか違うと思った。 「俺は勇者とかそんな肩書きは要らなかったんだよね。俺はただ、自由に世界を見て回りたかったんだ。気の向くまま色んな所を旅して、色んな人に会って、たまに魔物とかと戦って、俺が憧れたのはそういう旅が出来ることなんだよね」 俺がそう話すと、突然レイスが立ち上がった。 「…リオ、外に出たい。結界を解いてくれるか?」 「え?……はい」 レイスに言われてリオさんが結界を解くと、レイスは部屋を出ていってしまった。 ……レイス、あれから一度も俺を見なかった。 やっぱり、自分が産まれた国を悪く言われたのに気を悪くしちゃったのかな。 「気にすることはない。あいつは自分の不甲斐なさに苛立ってるだけだから」 俺がレイスの出ていった扉を眺めていると、ディルがそう言う。 俺は意味が分からなくて首を傾げた。 「時間が経てば落ち着くだろう」 『しばらく放っておけ』とディルが言った。 「それより、こっちはちょっと現実的な話をしよう」 そう言うディルは、いつもの少しチャラけた雰囲気じゃなく、ピリッとした緊張感を醸していた。 俺もそれに釣られて緊張してくる。 リオさんもいつの間にか、レイスの為に解いた結界を張り直していた。 「フタバはレオーネに敵対する意思はあるか?」 そう聞かれて、俺は思わずきょとんとしてしまう。 「…なんで?」 「…いや、ただの確認だ。フタバは強大な能力を持っている。それはその気になれば一国を滅ぼせるほどの能力だ。その能力が自国に向けられれば、俺はこの国の皇子として黙ってるわけにはいかない」 そう言われて、俺は息を吐いた。 「敵対するつもりはないよ、元々争い事はあまり好きじゃないしね。でもさっきも言ったけど、俺は自由に行動したい。それを邪魔するなら、滅ぼしはしないけど抵抗はするかもね」 俺がそう言うと、ディルはため息をついた。 「それはそうだな。そんな事にならないよう、こちらも配慮しよう」 「………だから嫌だったんだ」 「フタバ?」 ボソッと呟いた俺に、ディルは聞き取れなかったみたいで、俺をじっと見てきた。

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