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第117話
(レイスside)
フタバがアルザイルから来たのは知っていた。
初めてフタバを見付けたとき、何かに追われてるのか、もしくは逃げているのかという考えがすぐに過った。でも城からとは、思ってなかった。
フタバはあいつから逃げてきたんだ。
フタバが召喚者だと分かった時に何で気付かなかった。
少し考えれば気付けた筈だ。
そう思って、俺は壁に拳を叩き付けた。
ただいくら壁を殴ろうと、なかなか気が晴れなかった。
しばらくそこで立ち止まっていると、後ろから『キュッキュッ』と音がした。
見るとルディが居た。
「ルディ?どうした、なんでここに?」
そう声を掛けながらルディを抱きかかえる。
フタバが居るのかと思って周りを見回してもフタバの姿は無い。
「…もしかして、俺と一緒に出て来たのか?」
ルディにそう聞くと、ルディは『キュッ』と鳴いた。
「俺の事を心配してくれたのか?」
そう言うと、ルディはまた『キュッ』と鳴いた。
そんなルディに思わず笑みが漏れる。
「……ありがとう」
俺は庭園に移動すると、しばらくそこで落ち着くまで時間を潰した。
昨日フタバがここに居たときはルディは自由に走り回っていたけど、今は俺の横にピタッとくっついて離れない。
これはもしかして慰められてるんだろうか。ルディにまで心配されるとか、本当に情けないな。
そう思って、俺はため息をついた。
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