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第118話
『そんな事にならないよう、こちらも配慮しよう』
そう言うディルの言葉に、俺は完全に気落ちしていた。
俺が召喚者だと知られると、こうなることは何となく想像していた。
その気になれば国を滅ぼす事の出来る能力を持った素性の知れない人間が現れれば、警戒するのは当たり前だ。
それにディルは皇子だ。余計に警戒される事は分かっていた。
だから俺が召喚者だって知られたくなかった。
こうして、危険人物として扱われるのが嫌だった。
……せっかく、"俺"を見てくれてたのにな
そんな事を考えていると、突然リオさんがパンッと手を鳴らした。
俺はその音に驚いて体が揺れた。
ディルも驚いた表情をしている。
「少し休憩しましょう」
そう言って、リオさんがニコッと笑った。
「ディル様はレイス様を呼んできて頂けますか?」
「お前、従者が主人を動かすって……」
「何か問題でも?」
そう言って笑うリオさんに、ディルが怯む。
「………いや」
「では、レイス様を迎えに行って頂けますね?」
「………はい」
ディルはリオさんとそんなやり取りをした後、ぶつぶつと言いながら部屋を出ていった。
…………皇子様を従わせる従者って。
そう思って、俺はディルが出ていった扉を眺めていた。
「さぁ、邪魔者は居なくなりましたね」
そう言ってリオさんはフッと笑う。
今度は邪魔者扱い!?
「さて」
リオさんが俺に向き直る。
俺は思わず身構えてしまった。
「そんなに固くならなくても大丈夫ですよ」
そう言ってリオさんは笑う。
「ディル様はこの国の皇子ですから、あんな物言いしか出来ないんですよ」
『許してあげてください』とリオさんは言う。
「………分かってます。ディルが国を優先するのは当たり前ですから」
そう言うと、リオさんが『ふむ』と何か考え出す。
その後扉の方に行って、カチャと鍵を掛けて何か魔法をかけた。
「これでしばらく邪魔は入りません」
そう言いながら戻ってくると、俺の前の椅子に座った。
「フタバさん、少し私と話をしましょうか」
そう言ってリオさんがニッコリと微笑んだ。
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