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第119話
(ディルside)
俺はリオに言われた通りレイスを探していた。
どうもリオには逆らえない。
これじゃあ、どっちが主か分からないな。
そう思って、思わず苦笑が漏れた。
しばらく廊下を歩いて庭園に差し掛かると『キュッキュッ』と鳴き声が聞こえてきた。
「ルディ、どうした?」
と聞き慣れた声も聞こえてくる。
声がした場所を見るとレイスが居て、何故か地面に座っていた。
「こんな所に居たのか。ていうか、なんで地面に座ってるんだ?」
と言いつつ、俺もレイスの横に座った。
「いや、これは何となくな。で、ディルはどうしてここに?」
「リオに追い出された」
そう言うと、レイスが吹き出した。
「今度は何を仕出かしたんだ?」
レイスにそう聞かれて、何故か罪悪感が芽生える。
「……悪い、フタバを傷つけたかもしれない」
「フタバに何か言ったのか?」
そう言ってじっと見てくるレイスに、俺は息を吐いた。
「レオーネに敵対する気はあるかと聞いたら、フタバは敵対する気はないけど、邪魔するなら抵抗はすると言ってきた。そんなフタバに、そうならないように配慮すると言った」
その言った後のフタバは、どこか気落ちしたように見えた。
フタバがレオーネに敵対するなんてことはしないとは思う。
ただの確認のつもりだった。
でもそれがフタバを傷つけたかもしれない。
「ディルは王族だ。国の事を優先しなきゃいけないのはフタバもちゃんと分かってる。フタバは多分、ディルに勇者として……というよりは、危険人物として見られたことが嫌だったんだと思う」
レイスは膝に乗っているルディを撫でながらそう言う。
「勇者と見られるのが嫌ってなんだ?勇者は皆が憧れる存在だろう」
「フタバはこの世界の人間じゃないからな、俺たちとは考え方が違う。
フタバは自由にこの世界を見て回りたいと言っていた。勇者としての立場がそのしがらみになると考えたんだろう」
……本当にレイスはフタバの事をよく見てるんだな。
まったく、早く自分の気持ちに気付けば良いのに。
そう思って、俺は小さくため息をついた。
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