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第129話

(レイスside) ディルから何かないかと、急に振られた俺は『ダンジョン』とふと思い付いた。 ダンジョンはそれぞれの階層で魔物のレベルが異なっていて、自身のレベル上げには持ってこいだった。 でも『ダンジョン』という単語に一番に食い付いたのはフタバだった。 リオにダンジョンについて色々と説明を受けて、リオが行きたいかとフタバに確認を取ると、フタバは『行きたい』と速答していた。 リオがディルに視線を送ると、ディルは頷く。 ディルから了承を得て、ダンジョンに行くことが決まった。 ただ色々と下準備も必要な為、行く日程までは決められず、その日は解散となった。 「まさかこの世界にダンジョンがあるとは思わなかったよ」 部屋に戻ってからも、フタバは興奮冷めやらぬ感じでテンション高めにそう言う。 「ねぇ、レイスはダンジョンに入った事はあるの」 と目を輝かせて聞いてくる。 「これでも冒険者だからな。ダンジョンはレベルを上げるのに手っ取り早いんだ」 そう言うと、フタバの目が更に輝く。 「どんな魔物が居たの!?攻略はしたことあるの!?さっきリオさんが言ってたダンジョンには行ったことあるの!?」 と、フタバがグイグイと迫ってきた。 俺は迫ってきたフタバの顔を押さえて引き離す。 「ちょっと落ち着け」 そう言って押さえ込むと、フタバがようやく大人しくなった。 「……ごめんなさい」 押さえ込まれたフタバは、謝るとシュンとしてしまう。 こんなやり取りも久々だな。 そう思って、俺は思わず笑ってしまった。 「提案した俺が言うのも何だけど、ダンジョンは実戦訓練には持ってこいだけど、その分危険も伴う。下手をすれば死ぬかもしれないんだぞ?」 そう言うと、フタバがきょとんする。 「それくらい分かってるよ。でもそこで俺が死んだとしたら、そこまでの実力だったってことだよ」 そう言うフタバに、俺は笑ってしまった。 「本当、フタバは潔いな」 俺が笑っていると、フタバは首を傾げる。 「分かった、でも無茶だけはしないって約束してくれ」 そう言って俺は、フタバの頭を撫でた。 「うん、約束するよ。絶対に無茶はしない」 そう言ってフタバはニコッと笑った。

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