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第131話

俺たちはポーションの店から出て、また町中を歩いていた。 俺は隣を歩いているレイスをチラッと見た。 ……さっきからレイスが難しい顔をしてる。 俺、何かしたかな? 「……なぁ、フタバの世界の人間は他の世界の事を知る術を持ってるのか?」 俺がそう思っていると、レイスはそう聞いてくる。 俺は突然のことで、レイスが何を言ってるのか理解出来なかった。 「どういう意味?」 「……フタバはこの世界の人間じゃないにも関わらず、この世界の事をよく知っている。さっきのポーションだってそうだ。何でポーションの作り方を知っているんだ?」 そう言われて、レイスが聞いてきた意味を理解した。 「前に俺の世界にはこういう異世界を題材にした本が沢山あるって話したよね」 そう言うと、レイスは頷く。 「それはね、別の世界の情報を得てるんじゃなくて、全部が想像の世界なんだよ」 「想像?」 「うん。俺の世界には魔法使いも冒険者もいない。当然魔法も使えないし、魔物もいない。ああいうポーションとかも存在しない。 だから、俺の世界の人たちは想像するんだよ。こんな事が出来たら良いなとか、こんなのがあれば良いなとか。 俺がこの世界の事をよく知っているみたいに見えてるのなら、それはたまたまその想像の世界と一致しただけだよ」 こんな答えでレイスが納得するかは分からないけど、これ以上はどう答えたら良いのか分からないな。 だって、本当にたまたま一致してるだけなんだもん。 この世界で、俺が知らない事なんて沢山ある。 現に文字だって読み書き出来ないんだから。 俺が知ってる事なんて、これこそ微々たるものだ。 そんな事を考えていると、レイスがため息をついた。 「分かった。別にフタバの事を疑ってる訳じゃないし、ちゃんと信頼もしてる。だから、そんな顔するな」 そう言って俺の頭を撫でるレイスに驚いた。 ………そんな顔って。 俺、どんな顔してたんだろう。

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