133 / 269
第132話
レイスと歩いていると、ふと果物屋に目がいった。
……あれ?あの黒い玉。
俺は見覚えがある物に引き寄せられるように近付いた。
俺は店頭に置いてある黒い玉を手に取った。
やっぱり!これ前にレイスが採ってきてくれた木の実。
………確かメリルの実だっけ?
俺は積まれて山になってるメリルの実を見た。
レイスが一般的な果物って言ってたけど、本当だったんだ。
「買うか?」
そんな事を考えながらメリルの実を眺めていると、レイスが後ろからそう聞いてくる。
「だ、大丈夫だよ」
そう言って俺はメリルの実を元に戻す。
そんな俺を見てレイスがフッと笑った。
「メリルの実5コください」
レイスがそう店の人に頼む。
「レイス!?」
「俺が食べたくて買うんだ」
そう言って笑うレイスに俺は何も言えなかった。
レイスが買うのを待ってると、ふと隣の果物が気になった。
なんだろう、これ?
黄色の実が房になってる。
………ブドウ?でも粒が大きいから巨峰?
「それはフサの実だよ」
俺がブドウ擬きを見て首を傾げてると、それに気付いた店の人がクスクスと笑いながら教えてくれた。
「フサの実?」
「一粒食べてみな」
そう言って店の人がフサの実を一粒千切ってくれた。
「……ありがとうございます」
俺は薦められるがままフサの実を受け取ると、それを少し噛ってみた。
その瞬間、甘酸っぱい味が口に広がる。
んっ!これ、ブドウっていうよりはブルーベリーだ。
「おいしい」
俺がそう言うと、店の人は『そうだろう、そうだろう』と頷く。
「それもください」
とレイスが言う。
俺が慌ててレイスを見ると、レイスがニッと笑う。
「フサの実、気に入ったんだろ?」
「でも……」
「気にするな」
そう言って笑うレイスに、俺は観念した。
「……ありがとう」
ともだちにシェアしよう!