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第134話

(ディルside) 「お待ちしておりました、ディルハルト殿下」 宰相のゲイムがそう言いながら、胸に手を当てて頭を下げる。 「陛下はどちらに居(お)られる?」 「応接の間にてお待ちです」 『こちらへ』とゲイムが行く手を示した。 先日、父から文書を受け取ってから3日。 ようやく父との謁見が可能になった。 レイスにはこの事を話したけど、フタバには言ってない。 今日の夜にはこの事をフタバにも言うつもりだけど、フタバがどんな判断をするにしろ、ちょっと気が重い。 ゲイムの後に続いて長い廊下を歩く。 行く先々でメイドや従者が道を開けて頭を下げる。 王宮に来るのは半年ぶりくらいか…… 相変わらず、ここは堅苦しいな。 そう思って、俺は小さく息を吐いた。 応接の間の前に着くと、ゲイムが『ここでお待ち下さい』と言って中に入っていった。 俺はその瞬間、大きく息を吐いた。 「大丈夫ですか?」 リオがそう聞いてくる。 「……問題ない」 そう答えると、俺は目を閉じて気合いを入れた。 そんな事をしているとゲイムに呼ばれた。 「ディルハルト・レオーネ、参りました」 部屋に少し入ると、目の前に居る国王陛下に頭を下げた。 「そう堅くならなても良い」 そう言って陛下は笑う。 謁見の間ではなく応接の間に呼んだのは、どうやら国王としてでは無く父として俺に会うためだったらしい。 「お久しぶりです、父上」 「あぁ、元気そうで何よりだ。リオも元気そうだな」 そう言って、父上は俺の後ろに居るリオにも声を掛けた。 「陛下もお元気そうで何よりです」 そう言ってリオは頭を下げた。 ジオルド・レオーネ、現国王で俺の父だ。 まだ38という若い王だが、その政治力と統率力は計り知れない。 「ここに来たということは、宮に住まわせてる者について話してくれるということだね?」 そう言って父は笑う。 父は人の内心を見抜く洞察力に長けていて、この人の前では嘘を吐くのも不可能に近い。 尊敬はしているが、その分怖い存在でもある。 「そのつもりです」

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