136 / 269

第135話

(ディルside) 「………では、今そなたの宮に居るのはアルザイルの勇者だと言うのか?」 俺はフタバの事を隠さず父上に話した。 「はい、本人にも確認しました。アルザイル側の証言は取れてないですが、間違いないと思います」 「何故今まで黙っていた?」 そう言う父上の声が一気に低くなる。 「確信が得られなかった為、報告を保留にしていました」 「これは特令に当たる案件。そなたの判断で保留にしていい問題では無い」 父上の声が更にきつくなる。 俺は一度大きく息を吐いた。 「勇者の人となりを見て、私が大丈夫だと判断しました」 「レオーネに仇成す者ではないと?」 「はい」 「それは断言出来るのか?」 「出来ます。勇者は決してレオーネに仇成す事はない。ディルハルト・レオーネの命に賭けて誓いましょう」 そう言うと、父上は大きくため息をついた。 「分かった、まずはそなたを信じよう。で、その者との謁見は可能か?」 「分かりません。彼はアルザイルでの一件で王族……いや国王という存在に嫌悪感を抱いています。話してはみますが、もしかしたら断られるかもしれません」 「国王の要請を断るなど、不敬に当たります!」 俺がそう言った瞬間、ゲイムが身を乗り出してそう叫ぶ。 「控えろゲイム。彼はこの世界の人間ではない。この世界の決まりに彼は当てはまらない」 俺がそう言うと、ゲイムは顔を歪ませた。 「彼に話をしてみて、返事を貰えたらご連絡致します」 父上に向き直ってそう言うと、父上は『うむ』と頷いた。 「一つ、勇者の名前を教えて貰えないか」 「…フタバ。フタバ・カザシロといいます」 「……フタバか、覚えておこう」

ともだちにシェアしよう!