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第137話

果物屋を出ると、いよいよドワーフの職人さんが居る武器屋に行くらしい。 俺はようやく会えるドワーフに胸を踊らせた。 「ねぇ、レイスはその人に会ったことあるの?」 「俺は剣を一振り打って貰ったことがあるんだ」 「それ?」 俺はレイスが持ってるロングソードを指差す。 「いや、これは違うよ。もう一つ前に持っていた剣だ」 「…それはどうしたの?」 「俺の不注意で折ってしまってね」 そう言って、レイスはどこがはぐらかすように笑う。 ……訳ありかな。 これ以上は聞いてほしくないみたいだ。 もしかしてその人とも蟠りがあったりするのかな。 でも蟠りがあったら、その人のところに行こうなんて思わないよね。 そんな事を考えていると、ポンと頭に手を置かれた。 「どうした、疲れたか?」 そう言ってレイスが覗き込んでくる。 俺はその問いに首を振った。 「…大丈夫」 「そうか、疲れたら直ぐに言えよ?」 そう言われて、俺は頷いた。 しばらく歩くと、レイスが裏路地に入っていく。 そこはさっきまで賑わってた通りとは打って変わって閑散としている。 人気も段々と無くなってきた。 ………こんなところに本当に武器屋なんてあるのかな。 「あそこだ」 俺が少し不安に思っていると、レイスが少し先を指差した。 見ると、小さい看板が掲げてある。 そこには『ЦЖΕф』と書かれていて、読めないけど剣と盾が一緒に描かれているからかろうじて武器屋だと分かる。 俺は周りを見渡した。 そこは周りに店とかはなくて人通りも殆ど無い。 知る人ぞ知るって感じかな。 そう思っていると、レイスが迷わずその店の扉を開けた。

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