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第141話

「まぁ何だ、人には得手不得手がある。フタバ殿にロングソードが合わなかったってだけの話さ」 そう言って、カイジさんは俺の手を取って握り込んでたこぶしを解く。 「合わないのが分かったら、それを切り捨てて次を探しゃあ良い。それに固執するのは時間の無駄ってもんだ。さっさと次を見つけて、それを極めれば良いだけの話さ。」 そう言ってカイジさんはニカッと笑った。 ………確かにそうだよね。 俺でも鍛えればロングソードを振るえるかもしれないけど、振るえるまで鍛えてる時間が勿体無いよね。 「……うん、そうだね。ありがとう、カイジさん」 俺がそう言うと、カイジさんは『おう』と言って頷いた。 「それじゃあ気を取り直して、このナイフなんかはどうだ?」 そう言ってカイジさんが渡してきたのはナイフというよりは短刀に近いもの。 ロングソードよりは扱いやすそうだけど、多分俺には扱いきれない。 そう思ったけど、取り敢えず受け取ってみた。 カイジさんからナイフを受け取った瞬間、何か弾かれる感覚がした。 ………今、魔力が弾かれた? 「これ……もしかしてミスリル?」 「ほう、分かるか?」 カイジさんが感心したように言う。 「今このナイフを持った瞬間、魔力が弾かれたから」 ミスリルは武器や鎧に使われる金属だ。 加工がしやすく、出来上がった物も軽くて丈夫で扱いやすい。 上位ランクの冒険者や騎士なんかが好んでミスリル製の武器を使ったりする。 ただミスリルは魔法を弾く特性を持ってて、魔術師や魔剣士なんかとは相性が悪かったりする。 ミスリルって希少金属の設定が多いけど、この世界でもやっぱり希少なのかな? 「そうか、ミスリルは魔法を弾くからな。フタバの魔力がそのナイフに含まれてるミスリルに弾かれたのか」 そんな事を考えながらそのナイフを眺めていると、そう言ってレイスが覗き込んできた。 「そうみたい。魔力が弾かれたってことは、このナイフは俺とは相性が悪いみたい」 「なんだ、フタバ殿は魔術師だったのか」 カイジさんが少し驚いたように言う。 「そういえば、俺の職業は言ってなかったね」 「なら、これなんかはどうだ?」 そう言ってカイジさんが次に取り出したのはサバイバルナイフを少し大きくした感じのナイフ。 俺はそれを受け取った。 ……うーん、さっきの短刀よりはマシだけど、やっぱり俺にはまだ大きい。 この世界では折り畳みナイフみたいな小さいナイフって無いのかな? 「もう少し小さいのってないかな?」 「それより小さいのか……あとは投擲用のナイフくらいしか無いぞ?」 「投擲用?」 それって確か投げて攻撃するためのナイフだよね。 「これがそうだ」 そう言ってカイジさんが持ってきたのは、数本の小さいナイフ。 俺はそのナイフを1本持ってみた。 「殺傷力は低いが上手く使えば相手を怯ませることが出来る」 カイジさんがそうナイフの説明をしてくれる。 すごく手にしっくりくる。これが丁度良いかも。 俺はこの投擲用のナイフを買うことにした。 買ったのは全部で10本。 俺は何だかんだで、嬉しくてナイフを取り出して眺めていた。 この世界で初めての武器。 どうしよう、めっちゃテンション上がる! ……でもこれを投げて当てるのは難しそう。 かなりのコントロールが必要だよね。 それは練習次第で何とかなるけど、このナイフって投げたら投げっぱなしだよね。 うまく回収する方法があれば良いんだけど……… そんな事を考えていて、俺はポンッとある方法を思い付いた。

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