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第145話
俺は魔力で出来た糸を、試しに一本だけナイフにくくりつけた。
ナイフにくくりつけた糸を魔力操作で動かしてみた。
糸は動く。
でもナイフの方が上手く動いてくれない。
ナイフをまっすぐ飛ばしたいのに、横を向いたりしてしまう。
うーん、何がいけないんだろう?
投げ方?それとも魔力操作?
まだ初期段階。
俺は早くも壁にぶち当たっていた。
レイスに投擲の見本まで見せてもらったのに。
何で上手く出来ないんだろう。
そう思って俺はため息をついた。
「魔力の糸じゃなくて、ナイフそのものに魔力を宿せないのか?」
『直接ナイフに魔力を宿して、それを操れば良いんじゃないか』とレイスは言う。
俺は完全に目から鱗だった。
そうじゃん!なんで思い付かなかったんだろう。
ナイフそのものに魔力を付与すれば、ナイフ自体を操れる。
俺は早速やってみた。
魔力をナイフに付与する。
魔力を付与した状態のナイフを魔力操作で飛ばした。
加速させたり、逆に遅くしてみたり。
空中で止めたり、動線を変えてみたり、いろんな事を試してみた。
さすがに細かい動きはまだ追い付かないけど、魔力の糸で繋いでた時よりは格段に思い通りにナイフが動いてくれた。
「やったー!!出来た!
ありがとう!レイスがアドバイスしてくれなかったら出来なかったよ」
俺は嬉しさのあまり、思わずレイスに抱き付く。
レイスはそんな俺の頭の撫でた。
「フタバの事だから、まだ練習するんだろ?」
そう聞かれて、俺は頷いた。
1本で成功した俺は、今度はナイフを2本に増やした。
2本のナイフに別々の動きをさせる。
結果、最初は別々の動きが出来ていたナイフが、最終的には同じ動きになってしまった。
「う~、別々の動きをさせるのって難しい」
俺が唸ってると、レイスがクスクスと笑う。
「別の動きを同時に、それも明確に頭の中で思い浮かべなきゃならないからな。こればかりは慣れるしかないかもな」
2本でも難しいんだから、ナイフの数を増やそうと思ったら道のりは遠いな。
そう思って、俺はため息をついた。
どれくらい経ったのか、従来とメイドが慌ただしく移動してるのに気が付いた。
皆して玄関の方に向かってるみたいだった。
「どうやらディルとリオが帰って来たみたいだな」
従者やメイドたちの動きを見て、そうレイスが言う。
あぁ、だから皆して慌ただしくしてたのか。
「今日の練習はこのくらいにしておいて、俺たちも二人を出迎えに行くか?」
「うん」
そう言うレイスに俺は頷いて歩き出そうとした瞬間、一瞬目眩がした気がして俺は動きを止めた。
………なに?
俺は少しの間、じっとして様子をみた。
でもなんともなくて、俺は気のせいかなと思った。
「フタバ、どうかしたのか?」
動かない俺に、レイスが近寄ってくる。
「ううん、何でもないよ。早く二人のところに行こ」
そう言って俺は、ディルとリオさんを出迎える為にレイスの手を引いて玄関に向かった。
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