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第150話

(レイスside) 朝起きると、フタバの姿がなかった。 一通り部屋の中を見たけど、やっぱり居なかった。 ふとドアの前を見ると、ルディがドアに向かってちょこんと座っている。 どうやら置いていかれたみたいで、どことなく哀愁が漂っていた。 「ルディ、フタバはどこに行ったんだ?」 そう聞くと、ルディは『キュッキュッ』と鳴いてドアの外を気にする。 ルディは頻りに鳴いて何かを訴えてくるけど、ルディが何を言ってるのか分からない。 「一緒にフタバを探すか」 そう言ってルディを抱えると、ルディは返事をするように『キュッ』と鳴いた。 フタバを探してしばらく歩いていると、前からリオが歩いてくる。 「レイス様、おはようございます」 俺に気付いたリオが、そう言って頭を下げてきた。 「おはよう、リオ」 「ルディ連れてどうしたんですか」 俺が抱えてるルディに視線を向けて、リオはそう言って微笑む。 リオがルディを撫でると、ルディも嬉しそうにリオの手にすり寄った。 「フタバに置いていかれたみたいでな」 俺がそう言うと、リオはクスクスと笑った。 「フタバさんなら厨房の方に走っていくのを見ましたよ」 「厨房?」 そういえば、昨日ルディを迎えに行くのに厨房まで行ったな。 厨房に何の用事があるんだ? 「……分かった、厨房に行ってみるよ」 そう言って俺はリオと別れた。 宮の一階の奥、俺は厨房を目指した。 厨房が近付いてくると、何やら甘い匂いがした。 中を覗いて見ると、料理人たちが一ヶ所に固まってなにかしている。 皆して何してるんだ? 「レイス様!?なぜこのような所に!?」 そんな事を考えていると、後ろからそう言うメイドの声がした。 「フタバがここに居ると聞いてな」 「……そうだったのですね」 とメイドは明らかに安堵の表情を見せた。 ここに居る者たちは俺が王族だと知っている。 王族が使用人の区域に入る時は大抵何らかしらの不祥事が起きたときが多い。 昨日はフタバが一緒だったから良かったが、今回は一人だから警戒されたんだろう。 「フタバはどこに居る?」 「フタバ様なら、あちらに」 そう言ってメイドが示したのは、料理人たちの人だかり。 どうやらあの中にフタバが居るみたいだ。 ………本当に何をしてるんだ? そう思って、俺はため息をついた。 「悪い、ルディを頼む」 そう言ってメイドにルディを渡した。 その瞬間、ルディが寂しそうな声を上げる。 でも流石にルディを厨房に入れる訳にはいかない。 「ルディ、すぐに戻ってくるからちょっとだけ待っててくれるか?」 そう言ってルディの頭を撫でると、ルディは『キュ~』と不服そうに鳴く。 納得はしてないが、分かってはくれたみたいだ。 俺はルディをメイドに預けて厨房の中に入った。 料理人たちの人だかりに近付くにつれて、さっきからしている甘い匂いが強くなる。 人だかりを造っていた料理人たちが俺に気付いて道を開ける。 その先にフタバの姿を見つけた。

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