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第152話

「あははははっ!そんな事になってたんだな」 今朝の出来事をディルに話すと、ディルは爆笑する。 一緒に話を聞いてたリオさんも爆笑まではいかなくても、肩を震わせて笑っていた。 「で、今日の朝食がこれなんだな」 とディルは目の前に置かれたホットケーキを指差した。 今、俺たちの目の前にはキレイに盛り付けられたホットケーキが置かれている。 結局俺はあの後、この城に居る使用人全員分を焼くことになった。 それはメイドたちも食べてみたいと言い出したから。 でもここに居る人たちにだけに作るのは申し訳なくて、だったら使用人全員分作ってしまえ、という結論に至った。 この城に使用人がどれくらい居るのか分からないし、何枚焼いたのかも覚えてない。 最終的には他の料理人の人にも焼き方を教えて、皆して一心不乱にホットケーキを焼いていた。 俺自身がただ単に食べたくて作ったものに、皆がここまで興味を示すとは思わなかった。 ただフサの実のソースが足りなくて、使用人たち用はバターとハチミツというオーソドックスなものになってしまった。 それもちょっと申し訳無かったな。 「んっ!?これ旨いな」 ホットケーキを一口食べたディルがそう言う。 「……本当ですね。ほんのり甘くてふわふわで美味しいです」 とリオさんも褒めてくれた。 「しかし、フタバが料理出来るとは驚きだな」 とディルが呟く。 「こう見えても俺は元の世界では独り暮らしだったんだよ。料理くらい出来るよ」 っていうか、ホットケーキなんて混ぜて焼くだけだから誰にでも出来ると思う。 「……フタバ、聞きたかったんだけど……」 とレイスが何か言い掛けた。 「そんな事より、せっかくのホットケーキが冷めちゃうよ。早く食べよう。ルディ!ルディにはこれだよ」 そう言って俺は横にいるルディに声を掛けるけど、ルディは反応してくれなかった。 俺とレイスがホットケーキ作りに掛かりきりになって、その間放っておかれたルディは完全に機嫌を損ねていた。 「ルディ~、お願いだから機嫌直してよ。 ほら!ニンジンのケーキとフルーツも一杯あるよ!」 俺は何とかルディのご機嫌を取る。 これは機嫌を損ねてしまったルディに、後から作ったルディ専用のニンジンのケーキ。 ルディはチラッと俺を見てフンと鼻を鳴らすと、ニンジンのケーキを食べてくれた。 その様子を見て、俺はホッと息を吐いた。 その後、俺もホットケーキを食べる。 俺はホットケーキを食べながらチラッとレイスを見た。 レイスがさっき何を聞きたかったのかは何となく想像がつく。 想像出来たからこそ、俺はレイスの言葉を遮った。 レイスが言おうとしてたことは、俺にとって不都合な事だから。 まぁ、ぽろっと言っちゃった俺も悪いんだけど。 ………でもこれは、レイスたちが知らなくていい事だから。

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