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第153話
「そうだ、朝イチで父に文書を送った。夕方には返事が来ると思う」
ホットケーキを食べてると、ディルがそう言った。
「……あ、うん」
忘れてた訳では無いけど、いざとなるとやっぱり気が引ける。
そう思って、俺は小さく息を吐いた。
朝食を食べ終えると、ディルとリオさんは公務があると言って出掛けていった。
レイスも用があると言って出掛けた。
………今日は一人か。
何か、一人になるの久しぶりかも。
この世界に来て、レイスに会ってからはずっとレイスが側に居たからなぁ。
……そう思ったらちょっと寂しくなってきた。
俺は頭を振って、よしっと気合いを入れ直した。
せっかく時間が出来たんだ、中庭でナイフを操る練習でもしようかな。
そう思って、俺は中庭に向かった。
「あ、フタバ様!!」
中庭に向かってる途中、数人のメイドさんに呼び止められた。
「あの、ホットケーキすごく美味しかったです!私たちの分まで作って頂いてありがとうございました」
そう言って彼女たちは頭を下げてくる。
「喜んで貰えたなら良かったです」
そう言って笑い掛けると、メイドさんたちはもう一度頭を下げて『キャッキャッ』言いながら走っていった。
………何て言うか、この城の使用人たちって元気なんだよな。
中庭に着くと、ルディはさっそく走り回ってた。
ルディの機嫌が治って良かった。
そう思ったら、自然と笑みが溢れた。
じゃあ、俺もさっそく始めますか。
そう思って、俺はフォルダーからナイフを2本取り出した。
ナイフに魔力を宿す。それをまずは2本同時に飛ばした。
その瞬間、パンッと魔力が弾けて消えた。
え!?
浮力を失ったナイフが地面に落ちる。
………何?魔力が上手く操れなかった?
俺は自分の手を眺めて、もう一度今度は手に魔力を宿してみる。
今度はちゃんと魔力が宿って消えることはなかった。
何だろう。調子が悪かったのかな?
俺は落ちたナイフを拾って眺める。
……誰も居ない時に何かあったらマズいよね。
今日はナイフを操る練習は止めといた方が良いかな。
そう思って、俺はナイフをフォルダーに仕舞った。
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