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第160話
「……ねぇ、やっぱり変じゃない?」
俺は着替えさせられた自分の姿を見て不安になる。
「そんな事ない、似合ってるぞ?」
とレイスは言う。
「レイスは良いよね、似合ってるから」
そう言って少し怒った素振りをすると、レイスはクスクスと笑った。
リオさんが俺に用意してくれた服は、レイスたちよりは落ち着いてるけど、俺には派手すぎる代物だった。
形は地球で言うスーツみたいで、ダークグレイの生地に襟と袖と裾には金の刺繍が入っている。
他にもチェーンなんかの装飾品まで付いていた。
なんか、服に着られてる感が半端ないんだけど……
でももう着替えてる時間がないからこのまま行くしかないんだよね。
……笑われない事を祈ろう。
そう思って、俺は重い足取りでレイスたちと一緒に外に出た。
外に出ると、門の所に馬車が停まっている。
その馬車は大きな黒の車体に扉の所に金色の紋章が付いてた。
こんな馬車、漫画とかで見たことある。
確か貴族とかが自身の所有物に家の紋章を付けるんだよね。
ってことは、これは王族の紋章なんだ。
「レオーネの王族の紋章は二頭の獅子が剣を支える形になっています。二頭の獅子は騎士と魔導師、その二頭が支えてる剣が王を表しています」
俺が馬車に付いてる紋章を眺めていると、リオさんがそう教えてくれた。
俺は『そうなんだ』と思って、もう一度紋章に目線を向けた。
「さぁ、もう時間がありませんよ。フタバさんも早く馬車に乗ってください」
リオさんがそう言うと、近くに居た従者の人が馬車の扉を開けた。
俺は促されるまま馬車に乗り込んだ。
馬車の中は広々としていて、4人が乗っても余裕で、取り付けられている座席もフカフカで乗り心地は抜群だった。
さすが王族の馬車って感じかな。
俺たちが全員乗った事を確認すると、リオさんが御者に合図を送る。
御者はその合図を確認して馬車を出発させた。
王宮までは馬車で10分くらいらしい。
俺は馬車が出発したことで、大きく息を吐いた。
そのまま座席の背凭れに凭れ掛かる。
………朝騒いだせいかな、なんかちょっと疲れちゃった。
そう思って、俺はため息をついた。
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