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第164話
(レオーネside)
執事からディルハルトたちが到着したと連絡を受けた。
しばらくすると、執事がもう一度来て既に部屋の前に居ることを知らせてきた。
部屋に入る事を許可すると、一番最初にディルハルトが、その後にリオが入ってくる。
それに続いて、アルザイル王国第一皇子のレイス・アルザイルが入ってきた。
たまにディルハルトの宮に出入りしているとは聞いていたが、ここで姿を見せるとは思わなかった………彼の為か。
そう思って、私はレイス殿の後ろに居る人物に目を向けた。
……あれがアルザイルの勇者。
どれ程の人物かと思えば、まだほんの子供ではないか。
ソファに座るように指示をすると、レイス殿がエスコートをして、ディルハルトとリオが迎える。
幼いとはいえ、あの美しい面立ちならばディルハルトとレイス殿が虜になるのも頷けるか……
「私はレオーネ王国国王、ジオルド・レオーネだ。そなたがアルザイル王国の勇者、フタバ・カザシロで間違いはないか?」
皆の向かいに座りそう聞くとフタバは頷く。
「…風城 双葉です。……あの、一つ訂正しても良いですか?」
そう遠慮がちに聞いてくる。
「許可しよう」
「俺は勇者として召喚はされましたけど、勇者ではないですよ」
「……どういうことだ?」
勇者として召喚されたのに勇者ではない、私はその意味が分からなかった。
「確かに勇者として召喚されたけど、俺はアルザイルの勇者になるつもりは無いし、アルザイルの為に動くつもりもないんですよ」
そう言うフタバは言った。
「ではなんの為に動くと?」
「それはまだ分かりません」
「なぜ勇者にならなかった?勇者になれば、富や名声は思うがままであろう」
そう言うと、フタバはきょとんとした。
「……それ、俺に何の得が?」
その返答に私もゲイムも驚いた。
「……富や名声は要らぬと言うのか?」
信じられない。
今までそんな人間は居なかった。
「そんなの要らないですよ。お金は必要かもしれないけど必要以上は要らないし、名声なんてこれこそ要らない」
『名声なんて面倒くさいだけ』とフタバは言う。
………フタバの目を見る限り、嘘は言っていない。
ならば本当に本心で『要らない』と言ってるのか。
私はディルハルトに視線を向ける。
ディルハルトを見る感じ驚いている様子はない。
それは他の二人も同じだ。
なるほど、『人となり』か。
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